中国が突然“クリエイティブ”に!「メイカーフェア深セン」で見た異変「ウルヴァリン」

 右の写真の彼がつけているのは、アメリカンコミックのマーベルシリーズに出てくるスーパーヒーロー「ウルヴァリン」の爪を模したプロジェクト。木製の機構と圧搾空気、爪は鉄定規をカットして作っているありあわせ感と、加工精度に見られるスキルのバランスがなんともいい。金属をこのように切り、最終的な形に合わせるために削るのはたいへんで時間もかかる。けがの危険性もある。

 下写真の目玉ロボの作者は美大出身のアーティストで、上の目玉ロボは199元(1元17円として3383円)で販売している。このような作品をもっと作っていきたいとのことで、製造に向いた深センに近々移住するという。

中国が突然“クリエイティブ”に!「メイカーフェア深セン」で見た異変目玉ロボ。スマートホンアプリで顔認識を行い、Wi-Fiで繋がれた目玉ロボの目玉が、見ている人の顔を追いかける

 こうした遊び心にあふれたプロジェクトは、それこそ東京のメイカーフェアにはあふれているが、これまでの深センのメイカーフェアにはなかったものだ。上記のプロジェクトも深センのメイカーフェアにあるから目立つが、メイカーフェア東京に出展していたら、まわりの「もっとすごいもの」に囲まれてあまり目立たなかっただろう。そもそも僕が記憶する限り、日本のメイカーが深センから招聘され、深センで展示などを行ったことは多数あるが、逆に費用を日本側が持つなどして深センのメイカーを日本に公式招待したケースはおそらくゼロで、この世界では日本は一方的な輸出超過である。

 とはいえ、今年の深センメイカーフェアで見られたものが、これまで中国になかった動きなのは間違いない。なぜ中国・深センのメイカーたちが突然クリエイティブになったのだろう。

深セン政府がDIYを振興
「予測不能なことが起こりやすくしよう」

 中国のイノベーションについて調査している東京大学の伊藤亜聖准教授の調査によると、深セン市政府の「メイカー発展3年行動計画」に見られる政策は、中国の政治家だけで考えたとは思えないような、オリジナリティあふれる要素が見られる。

中国が突然“クリエイティブ”に!「メイカーフェア深セン」で見た異変伊藤亜聖准教授のレポート。全文はここでダウンロードできる

「MITのFablabと、アメリカのMake:誌がやっているMaker Faireを誘致しよう」や、「内容豊富、形式はいろいろ、メカニズムは臨機応変なメイカーサービス体制を作ろう」などはとても「政治家や官僚らしくない」文章だ。普通の中国の政治家は(おそらく日本の政治家も)、マサチューセッツ工科大学のファブラボや、メイカーフェアという単語そのものを知らないだろう。

 また、筆者も海外のメイカーフェアに参加している経験から、日本でメイカー振興を考える部署に意見を求められることがあるが、だいたいは「いろいろな有識者に意見を聞いた結果、これが問題を解決するベストな方法」と、そこに問題もプロセスもゴールも書いてある唯一の選択肢が資料に書いてある(そのとおり行くことはほとんどないが…)ことがほとんどで、予測不能なことが起こりやすくしようとだけ書いてある、このような文書は見たことがない。