よく挙げられる例としては、地下鉄に乗る車いすの方の移動です。乗車の際にその駅の駅員が折り畳みのスロープを持ってサポートします。下車駅では、すでに車いすの方が何両目に乗っているかを把握して、駅員がスタンバイしています。

 また駅構内には大抵、エスカレーターやエレベーターが備え付けられていて、高齢者の方や、身体の不自由な方にはとても便利になっています。

 時には階段昇降機まで設置されているところもあります。「だから、日本の街ではよく障害者や車いす姿の人を見かけるのだ」と納得させられます。逆に、中国では、「障害者の姿が少ないのはなぜ?」と中国を訪れる日本人から質問されます。

中国の道徳モラルを
「10年は後退させた」といわれる事件

 日本ではあまり知られていないかもしれませんが、「もし、お年寄りが街で倒れたら、助けるべきか、無視するか」という問題では、ある民事裁判の判決が長年、中国の国民を悩ませてきました。

 これは2006年に南京で起こった出来事です。ある20代の男性がバスを降りたところ、バスに乗ろうと転んでケガした60代の女性の身体を起こし病院に連れて行きました。その後、女性は「男性にぶつけられた」と言い、賠償金を要求したのです。

 結局、裁判まで持ち込まれ、判決で男性は4万元(日本円約64万円)の支払いを命じられました。この判決は当時全国に大きな波紋を広げ、さまざまな議論を呼びました。その「後遺症」はいまだに強く残っていて、「善意ではもう人を助けられません、特にお年寄りは……」と、多くの人々はそう思ってきました。