例えば、幼児教育を無償化した場合、直接の利益を受けるのは、幼稚園や保育所に子どもを預けている両親である。だが子どもがいない人は一方的に税負担を強いられることになるし、全面的に無償にすれば、高額所得者や、“お受験”中心の幼稚園に通わせている親にも恩恵が与えられる。

 また待機児童問題が解決しない現状で導入すれば、たまたま保育所に子どもを入所させることができた運のいい親だけが恩恵を受けることになる。

 政府は、一定の条件を満たした未認可の保育施設も無償化の対象にすることを検討しているようだが、それだけでは全てのニーズをカバーし切れないだろうし、対象となる施設の選定をめぐって混乱が起こるだろう。

 恣意的な基準で選抜すれば、「森友・加計問題」の再来になりかねない。機会均等や再分配という目的からすれば、むしろマイナスだし、教育の質の確保という点からも疑問が残る。

 経済面で子育てしやすくし、少子化対策にするという目的から見れば、一応プラスだが、待機児童問題が解決しないと、子育て中の女性の社会進出を促すことにはならず、少子化対策の効果はあまりないかもしれない。

 一方で、子どもの利益を考えると、また話は違ってくる。

 人材育成あるいは教育の機会均等という目的から幼児教育を充実させたいのであれば、幼稚園や保育所に子どもを通わせることを準義務化し、各施設の教育の質を確保することを最優先すべきである。

 高校や大学の無償化についても、経済的再分配や誰もが高等教育を受けられる“機会均等”のためか、優秀な“人材育成”のためかを考える必要がある。

 後者が目的であれば、一定の才能や努力を示していることを無償化の条件にしたうえで、貧しい家庭に育っても高度な教育を受けられる環境の整備に力を入れるべきだろう。中卒、高卒で就職して所得税を払っている人とのバランスも考える必要がある。