一方、公共支出による総需要の下支えや、円安による輸出促進などによって、企業の価格転嫁環境は改善しました。

 企業は、労働者と違って、消費税率の引き上げや輸入物価上昇のコストを価格転嫁することができました。

 第III期の利益と賃金の相反は、第II期のような労使関係の変化によってもたらされたものではありません。

 政府の経済政策によって操作された相対価格によって、労働者の所得が、企業と政府に吸い上げられることになったのです(このことは昨年12月29日付けの1回目に詳述)。

賃金抑制が成長率鈍化の要因
景気拡大に民間消費の寄与みられず

 賃金の抑制は、日本経済全体に対して、どのような影響をもたらしているでしょうか。

 景気拡大過程の経済成長率を見ると、第11循環の6%台に比べ、第12循環以降、大きく低下し、2%前後となりました。

 そして、アベノミクスのもとでの第16循環では、1%に近い値へと、もう一段の低下につながっています(図2 景気拡張過程の経済成長率とその内訳)。

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資料出所:内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算」
(注)
(1) 景気拡張過程について推計したもので第16循環は2017年の第Ⅲ四半期までとした。
(2)実質経済成長率は、起点を100とした実質GDP(四半期別季節調整値)の指数系列として推計した線形関数の傾きとし、年率に換算した。
(3) 実質GDP(四半期別季節調整値)を構成する各需要項目について、時系列の計数を線形関数で推定し、一期分の増加分を計測した。当該増加分が実質GDP全体の増加分に占める割合によって寄与率を計算し、当該寄与率を2)の実質経済成長率に乗じて寄与度を計算した(民間企業設備は民間在庫変動を含み、公的固定資本形成は公的在庫変動を含む)。
(4) 第14循環の民間企業設備の寄与度は0.83%で民間最終消費支出の0.75%より大きい。