戦後日本経済における設備投資の推移を見ると、90年代初めのバブル期までは、経済が長期の成長趨勢にあったので、投資の循環も、成長軌道の中に溶け込んでいました。

 景気後退過程での落ち込みもあまり大きくはなかったのですが、バブル崩壊以降は、設備投資は長期の低下趨勢の中にあります。

 バブル崩壊以降、賃金は抑制されたことから、企業収益の改善や投資支出の改善が、景気拡大を主導する傾向を強めました。

 しかし、設備投資は短期の需要として景気の拡大を主導するとしても、同時に資本ストックを蓄積し、巨大な生産能力を残していくことになるのです。

 投資の拡張が、その後の過剰供給を生み出し、投資循環の大きな振幅を生み出すことになります。

 この投資循環の振幅が、90年代後半以降の景気後退過程に、多大な失業者を生み出すことになっていったのです。

 人口が減少に転じた日本社会で、設備投資が長期的に減少していくことはやむを得ないことで、これを高度経済成長期のような成長趨勢に戻そうとすることは、無謀な取り組みのように見えます。

 日本は、すでに多量の資本ストックを蓄積し、高度な生産能力を備えた経済大国です。資本ストックに新たに付け加わるフローとしての設備投資が減少したとしても、資本ストックは着実に増加し、それにふさわしい需要を見つける方に難しさがあります。

 設備投資循環の振幅から逃れるためにも、設備投資から消費支出主導の需要項目へと切り替えていくことが必要であり、賃金抑制は国民経済的観点から、間違った選択であると言わざるをえません。

資源制約のもとでは
円安・輸出主導は限界

 輸出主導の経済成長に関しても、世界経済の拡張が資源制約にぶつかり、資源価格の上昇と日本の輸入物価上昇につながっていることを直視する必要があります。

 世界が広く、資源も無限にある時代であれば、世界経済の拡大の波に乗って、輸出を増加させていくことも結構でしょう。しかし、すでに資源の制約がはっきりした状況では、世界経済が拡張し、仮に日本の輸出が増加したとしても、資源価格はすぐに上昇し、日本の支払うべき輸入品の代金も上がっていきます。

 働く人たちにとっては、仕事が増え、忙しくなったとしても、生活のために支払う金額は増え、実質生活は少しも改善しないのです。

 賃金抑制が投げかけた諸問題は、企業の労使関係の問題を大きく超えて、これからの日本経済の在り方と大きなかかわりを持つようになってきました。

>>続編『労組が賃上げに失敗するのは時代遅れの経済理論に原因がある』は1月22日公開予定です。