無期転換迎える前に3年ルールに抵触
派遣会社に無期転換の義務はない
たとえば、改正労働契約法における無期転換の5年を迎える前に、改正派遣法における3年に抵触してしまうケース。前述のように、3年ルールに抵触した派遣社員は、派遣先の企業に直接雇用してもらえなくても、派遣会社で無期派遣になる道がある。ところが、改正労働契約法で5年に満たない派遣社員に対して、派遣会社は無期転換する義務を負っていない。代わりに、新たな派遣先を紹介するなどの雇用安定措置が講じられる。
3年ルールで仮に派遣先企業への直接雇用が決まっても、それだけで安心とは言えない。新しい契約が契約社員など有期の場合には、5年後に労働契約法の無期転換の対象となるため、契約の際に年数の上限を設けられる可能性がある。また、雇用主が派遣会社から変更となるため、派遣社員時代の有給休暇はリセットされ、社会保険なども入り直すことになる。出された契約条件をよく吟味し、トータルで考えて損をしないように心がけたい。
こうして見てくると、2018年問題に不安を募らせる派遣社員が多いことは頷ける。とはいえ、不安が現実のものとなるかどうかは、その時になってみないとわからない。ネガティブに語られることが多い2018年問題だが、「労働者にとって『働き方の選択肢が1つ増えた』と前向きに受け取ってほしい」と派遣会社役員は言う。
派遣社員のキャリア形成に期待も
勤続17年の派遣社員の雇い止めが発生
NPO派遣労働ネットワークの理事長として、派遣社員の労働環境の向上を推進する中野麻美弁護士も、「同じ部署に数年いる正社員であれば、異動があることを前提にする場合が少なくありません。そうしたキャリア形成を念頭において、派遣社員のまま同じ企業の他の部署で働くのも、雇用の安定化に向けた選択肢の1 つという意味を含んでいるというのが新しい法律の趣旨です。働く側もそうした制度の主旨を見極めて、自分自身のキャリアプランを考えることが必要でしょう」と、派遣社員へエールを送る。