例外がなくなった
派遣の「3年ルール」
第二に、改正労働者派遣法により10月以降に影響が出てくる「3年ルール」についてはどうか。こちらは耳にしたことがある人も多いだろう。これまで「政令26業務」において、派遣社員として期間の制限なく働くことができた。それが法改正により、1人の派遣社員が同一の部署の業務に就けるのは最長3年となった。2015年10月以前に働いていた期間はカウントされないため、それ以降の派遣労働期間が3年に及ぶ人が、10月から初の対象となる。
このルールの最大の目的は、雇用が不安定な中で長年働いてきた派遣社員を、正社員や契約社員として、現在の就業先に直接雇用させようというものだ。現在の就業先での直接雇用が実現しない場合も、他の企業にスムーズに移り、キャリアを積むためのケアが整えられている。法による雇用安定措置には、(1)派遣先への直接雇用、(2)新たな派遣先の提供、(3)派遣会社での無期雇用、(4)その他雇用の安定を図るために必要な措置がある。派遣社員にとって心強い味方となるルールなのだ。
とはいえ、メリットとデメリットは表裏一体である。そもそも派遣という働き方が自分に合っていて、なおかつ現在の職場でずっと働きたいと考える人にとって、3年ルールは「余計なお世話」以外のなにものでもない。同じ就業先の同じ部署で3年を超えて働くことは、派遣元の派遣会社を変えても認められず、企業に直接雇用してもらうしかない。就業先の別部署で派遣を受け入れる予定があれば、同じ就業先で継続する可能性はあるが、会社より仕事の内容を重視する人は、有期の派遣就業は考えどころだ。
ルールの例外としては、一番多く考えられるのは(1)派遣社員が派遣会社と無期の雇用契約を結んでいる場合。他に(2)派遣社員が60歳以上の場合、(3)終期が明確な有期プロジェクト業務の場合、(4)産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する労働者の業務に従事する、があるが、これらの条件に当てはまる人はそれほど多くないだろう。
また、やはり心配なのは、前述の「無期転換」のケースと同様、派遣先企業の方針によって、雇用の安定がむやみに脅かされる可能性が否定できないことだ。企業にとって、派遣社員の直接雇用はコスト増につながる。それを避けるため、3年ルールに抵触しそうな派遣社員を事前に雇い止めする企業が増えるかもしれない。
以上が5年ルールと3年ルールの概要だが、もう1つ注意しておきたいことがある。「両者は別物ではあるが密接に関係している」(派遣会社役員)ため、どちらか一方だけではなく、セットで理解しておかないと、思わぬ落とし穴に陥るかもしれないことだ。