男性の詳細は、いつ生活保護を利用し始めたのか、父親がいつまで同居していたのかを含めて不明だ。しかしおそらく、幼少のころから病気の母親を支える役割を背負い、育ち・学びの機会を数多く失ってきたのだろう。男性に対して必要なことは、日常生活の中の「入浴」「おかずを食べる」といった機会をさらに減らすことではなく、増やすこと、幼少期・学齢期・少年期に必要だったはずの数多くの機会を、今からでも提供することではないだろうか。

食糧以外の出費はできない、
人工呼吸器の息子に光熱費が必要

次々に鳴る電話に対応し、切れば血が出るような当事者の声を聞いたら、内容をまとめてパソコンに入力する作業も必要だ。この日聞き取られてまとめられた当事者の声は、翌2017年12月27日、申し入れ書として厚労省に届けられた

 生活保護行政で何かと注目される大阪府からも、悲痛な声が上がる。

「2013年の引き下げ以降は、古い電機製品をだましだまし使っています。食費以外の買い物は、ほとんどしていません。また引き下げられたら、食費をさらに削るしかありません」(大阪府・男性・70代・単身)

 生活保護で暮らすお宅にうかがうと、「ナショナル」の冷蔵庫をしばしば目にする。「パナソニック」ではなく「ナショナル」ブランドの家電製品が生産されていたのは、2008年までだ。
 
 もう1人、自身は健康だが家族のケアをしている女性の声を紹介する。

「息子が交通事故に遭い、人工呼吸器を使用するようになりました。私が24時間介護をしています。夫はいましたが離婚しました。息子は体温調節が自分でできないので、どうしても光熱費が多額になってしまいます」(大阪府・女性・50代・息子と2人暮らし)

 障害児が生まれることや、子どもが病気や障害を抱えることは、しばしば両親の離婚の原因になり得る。子どもと暮らすことを選択した親は、生活保護を利用するとしても、生活とケアのすべてを担うことになる。もしも今年、引き下げが実行されてしまったら、私と同年代のこの女性は、息子さんの呼吸と体温と引き換えに何を「節約」することになるのだろうか。