大手メディアほど自治体財政を報じにくい

 最後は『メディア』である。なぜ多くのメディアは地方自治体の財政問題を大きく扱わないのだろうか。その理由として、自治体の財政に関する記事は、対象が一部地域に終始し、読者層が限定されるという背景があるだろう。利害関係の構造が複雑であり、正確なアウトプットには高度な取材執筆力が求められる一方、包括的に物事を報じなければならない大手メディアであればあるほど、対象読者/視聴者は限定される。スキャンダラスな事象があれば別だが、粛々と運営される地方自治体の財政について取材することへの意義と需要のバランスを取ることは非常に難しい。

 仮に取材/アウトプットをする場合でも、どのような立ち位置から自治体財政を報じるか、という課題がある。「国や地方は借金をしてでも、景気回復を目指せ」という一方で、「将来にツケを残すな」という相反する主張があり、およそどちらの主張が正しいものでも間違っているものでもない。

 ある市長は会食の席で大手新聞社の記者にこう言われたという。「市長はすごくよくやっていると思うんです。でも、監視対象であるべき市長を良く書けないんですよ」。

 メディアによる権力の監視という役割を全く理解できないわけではない。新聞社などによってスタンスの違いがあることはむしろ健全だろう。だからといって、首長や行政に対して、常に批判的な態度をとる必要はない。個別事案に対して是々非々で判断し、高い成果を上げていれば積極的にその評価を報じるべきではないだろうか。それによって、日本全国の自治体や住民へ啓蒙がなされ、結果的に監視へとつながるはずである。「なぜ、他の自治体はそれができていないのか」と検証と追及が連鎖していくことが大切だ。

自治体財政が注目されるためには、その先の明確なビジョンが必要

 ここまで自治体財政が注目されない理由を述べた。では、どうすれば自治体の財政が注目されるのかを考えてみたい。

 まず『自治体』には財政健全化の先に存在する明確なビジョンを発信することが期待される。というのも、財政健全化という言葉だけでは、『住民』も『メディア』もそれによって何がもたらされるのかをイメージすることができないからだ。いまでも多くの自治体では地域の総合計画と呼ばれるビジョンに近いものが存在するが、大昔に作り、更新がされていないものもあるうえ、最大の問題は住民がそれに関心を持てず、知らないということだ。