(2)通貨統合の狙いと構造的格差拡大の現実

 そもそも通貨統合は、為替上の利便に加え、加盟諸国経済の収斂を通じ、EU各国の競争力の向上をもたらすという期待の下に実現した。しかしながら、現実には、勤勉で競争力を有する北部諸国と、あくせくせずに生活を楽しむ南部諸国の間の経済格差が拡大していった。ただ、これは、容易に統一できない歴史や文化に関わる問題だとの指摘もある。

 経済的に見れば、それは、南部諸国が北部からの借金によって北部諸国の工業製品を買い続けるという構造であり、端的に言えば、経常収支の赤字国対黒字国という構造であった。これは統合程度の高いひとつの国家の中であれば、富裕な地域から貧困地域への所得移転をある程度許容することで解消されるが、ユーロ圏内部での統合はそこまで至っていない。これが、ユーロ問題の根本にある構造的問題である。

なぜ英国は合意への参加を
拒否したのか?

 それではなぜ、英国は孤立してまで、今回のEUサミットにおける合意への参加を拒否したのだろうか。また、これはいずれ英国がEU離脱に向かう兆候と考えてよいのだろうか。

(1)統合の利益は市場統合――開放経済に実利を求める英国の伝統

 英国は、キャメロン現政権を含め、独仏不戦のためのメカニズムとしての欧州統合の理念を否定するものではないが、伝統的に、より実利的な観点から、また、リカルド以来の自由貿易主義の哲学の浸透もあって、欧州の経済統合、市場統合の側面に強い関心を抱いている。

(2)政治社会統合に慎重

 他方、英国には、経済統合という実利を超えた、政治統合、社会統合には慎重な風土がある。それは、1066年の「ノルマン征服」以降、千年間大陸からの侵攻を許していないことへの誇りと独立不羈の精神による。

 自らを、欧州の一部ではなく、大陸と一線を画する島国として位置づける傾向が強く残る。それが、通貨統合やEU内の国境管理を廃止するシェンゲン協定に不参加という姿勢にも表れている。