中途採用面接では自分の経験に
マーケットの状態の分析をプラスする

 これが、中途採用(転職)の場合であれば、視点を少し上げて「企業人としての視点」を混ぜてくると、こちらはがぜん興味が湧いてきます。

「今勤務している弊社では、御社のクラウドサービスではないものを使っています。そのサービスを選択するプロセスには、10年前の御社製品のトラブルから起因した根強い不信感があります」

「このような『昔のマイクロソフト』の印象を引きずっている顧客は、もしかしたら少なくないのではないかと思います」

「私がマイクロソフトに入ったら、『この10年間、いかに品質向上とセキュリティ機能アップに尽力したか』を中心に顧客と会話しようと思うのですが、それについてどう思われますか?」

 こういった「事実に即した体験と、課題を解決するための思考プロセスの共有」は、私はとても好きです。もちろん、面接官の好みというのはあるとは思いますが、グローバル仕事人であれば「自分の体験」と「マーケットの状態」とを俯瞰して、単なる自分語り以上で何かしらの話の展開をすることが求められます。短い面接時間の中で、それを表現できれば、採用通知は非常に近いところに引き寄せられることでしょう。

 逆効果のパターンもご紹介したいと思います。

 付け焼き刃で「褒めるよりもけなす方が印象付けに効果的だからやってみよう」と思う人が一定数います。実際にあったことなのですが、学生向けの採用イベントでちょっとしたプレゼン講座を行った時でした。

 私が「今まで聞いた中で『このプレゼンはひどかった!』と思うものはありますか?」と聞いたとき、ある学生が手を挙げて「ビル・ゲイツのプレゼンはひどかったです」と答えました。

 創業者の名前を出してけなすのは、なかなかの強者です。

「ほう、どんなプレゼンでしたか?」と尋ねると、「えーっと、製品の名前とかがたくさん出てて、あんまりわからなくて…」ともごもご言い出しました。おそらく、実際にきちんとプレゼンテーションの動画を探し出して視聴したのではなく、何かのついでに目にした「印象」だけで発言したのでしょう。採用する側とすれば、相手が絶対に喜ぶことのないネガティブな主観的感想を、それも十分な理論武装もなく適当な思い付きで発言するような人間を採用することは絶対にないでしょう。

 実際には、採用側にとって「耳が痛い情報」を伝えるのは効果があります。しかし、それには「きちんとした下調べ」と「それに対する自分なりのアイディア」を持ってこそ価値が出ます。「単なる印象」であれば、わざわざ採用面接の場で聞くまでもありません。時間を使っている側は何を望んでいるのか、しっかり考えてストーリーを作ってみてください。

 では次に、「印象に残る服装・立ち居振る舞い」についてご説明します。