カキは体内に海水を通すことによってプランクトンなどを取り込み、成長する。一日に取り込む海水量は300リットルにもなると言われ、このとき栄養だけでなく、ウイルスなども体内に溜めこんでしまう。

 つまり「人の腸管でウイルスが増殖する」⇒「糞便とともに排泄され、下水処理場へ運ばれて浄化、塩素処理されるが、水の消毒に使う通常の塩素濃度ではウイルスは死滅しないため、感染力を保ったまま海水中を漂う」⇒「カキなどの二枚貝にプランクトンとともに摂取され、濃縮される」⇒「生食されることでウイルスは人の腸管に戻り、増殖する」を繰り返すサイクルができあがっているというわけだ。

 要するに、カキも被害者なのである。

 カキは生食用と加熱食用に大別され、生食用のカキを養殖する海域は、上記の汚染リスクを防ぐため、沖合に設定されている。カキの生食によるノロウイルス中毒をなくし、安心して生ガキを食べるには、とにかく海を汚さないことが一番なのだ。

 ただ不思議なことに、これも昔から、同じカキを食べても、あたってしまう人と平気な人が存在する。

 最新の研究によると、この事象には、ヒトの血液型とウイルスの血清型の組み合わせが関係しており、ある株は、O型、A型の人は感染するが、B型の人は感染しない。また、ある株はB型、A型の人は感染するがO型の人は感染しないということが、まま起こるという。

 冒頭のK子さんの家族では、A型のK子さん、AB型の娘は発症したが、B型の夫はまったく平気だったため、「それはあなたが娘の看病をしなかったからよ、私は大変だったの!」と、夫婦仲が若干険悪になってしまったようだ。

 ノロウイルスはいまだ謎多きウイルス。その性質を知り、対処できる限界を知った上で、謙虚に予防に努めることが大切だ。とはいえ残念ながら、現状では決定的な予防法はないので、発症しても負けない体力を、日頃から養っておくしかないようにも思う。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)