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ダイバーシティのさらに先へ
――Salesforce.comはなぜイクオリティをプッシュするのか

末岡洋子
【第167回】 2018年2月8日
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 Salesforce.comが発表する調査によると、全員に平等に機会を与えていると従業員が感じている場合、自社に誇りを持っている比率は3.8倍高くなる。また、顧客と従業員の80%が企業は社会に良いインパクトを与える責任がある、と述べている。一方で、自社が積極的にダイバーシティに取り組んでいると感じているビジネスパーソンは36%――3人に1人だった。

 Prophet氏は、イクオリティの問題は、環境問題と企業との関係のように発展すると予想する。「約30年前、企業が環境に懸念しているということは“かっこいいこと”ではなかった。株主にバリューを提供することと環境問題に取り組むことの間に関連性がなかった。だが現在、CO2のネガティブなインパクトについての認知が広がり、企業は地球と社会にとって良い存在であることが求められている。イクオリティでもこれと同じことが起こる」

 「地球の最大のリソースは人だ。人を公正に倫理的に扱う姿勢や考え方は、中長期的に株主へのリターンに連動する。逆に、人を公正に倫理的に平等な方法で扱わない企業は、長期的に悪い成果につながるだろう」

 とはいえ、冒頭でProphet氏が述べているように、ハイテク業界の課題は多い。例えば女性。ハイテク業界で女性はマイノリティだが、Salesforce.comでもやっと30%を超えたに過ぎない。リーダーの立場にある人に限定すると比率はさらに21%に下がる。人種も白人が65%近くを占めている。まだ社会の縮図とはいえない。

 「技術業界が社会全体を代表してイクオリティをプッシュするために、やらなければならないことはたくさんある。謙虚に取り組まなければならない」とProphet氏は穏やかに、だが確信を持っていう。

 Prophet氏自身も、最初からイクオリティのエキスパートだったわけではない。大学ではインダストリアルエンジニアリングを専攻したProphet氏が仕事の一環としてこの分野に関わるようになったのは、Hewlett Packard(当時)に勤務していた時だ。子供の労働、紛争地域で不当に採掘される鉱物などの人権問題に関心を持ち、LGBTQにも広がった。その後勤務したMicrosoftでは、社会正義関連の問題に関わった。トランスジェンダーである自身の子供が学校の寮のトイレやシャワーで苦労した経験も、Prophet氏の言葉に重みを与えている。

 関心を持つことが第一歩だとすれば、Salesforce.comはProphet氏と共にその一歩を踏み出した。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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