異なるシナリオもある。アップルは2018年春にGoogle HomeやAmazon EchoのようなAIスピーカーを発売する予定だ。発売予定をずらすなど開発・販売に手間取っているようだが、AIスピーカーは単なる賢いリモコン以上の可能性を秘めている。アップルが、規模を落とさず新しい付加価値を求める製品になりうるものだ。

 この市場は、AIエージェント、デバイス、クラウドサービスという大きく3つのプラットフォームが必要だ。Googleは、Googleアシスタント・Google Home・Play Store、AmazonはAlexa・Amazon Echo・Amazon.comとそれぞれ3つとも自前で用意してこの市場に臨んでいる。

 これに対してアップルは、Siri・新製品・App Storeという布陣になる。そして、デバイスに相当するAIスピーカーは、じつはスマートフォンとのリンクが欠かせない。Amazonは独自のスマートフォンは持っていないが、GoogleはAndroidを持っており、アップルはiOSとiPhoneだ。

PC、スマホの時代からAIエージェントの時代

 これからのコンシューマ市場では、AI、端末、クラウドが3種の神器として市場の覇権を握る要となりそうだ。しかも、近年のテクノロジー市場を見ると、コンシューマからエンタープライズへという流れができつつある。Gmailはいうに及ばず、SNSやメールに代わるコミュニケーションツールやストレージサービス、SaaS/PaaSなど、オープンなクラウドサービスもビジネス領域に浸透している。

 アップルが投入するAIスピーカーは、おそらくiPhoneとの連携を強く意識したものになるだろう。iPhone XにはFaceIDとそれを実現するためのマルチセンサーが備わっている。FaceIDの認証機能は、ホームエージェントの操作でこれから注目されるはずだ。すでにAmazon Echoではテレビ音声の認識が問題になった。家の中、複数のデバイスがある中、誰の命令が有効かの識別も必須となる。カメラ以外に赤外線や3Dスキャナを駆使するFaceIDは、細かい表情の変化も含めリアルタイムな認識も可能だ。表情を判断しながら対話ができるAIの可能性さえある。

 この戦略では、アップルは主力をスマートフォンから、ホームエージェント+サービスプラットフォームビジネスにシフトする可能性がある。ソフトバンクが、通信事業からロボット・AIにシフトしているように、iPhone Xの売れ行きは、生活やビジネスにおけるスマートフォンの位置づけの変化を象徴しているのかもしれない。

ITジャーナリスト・ライター 中尾真二)