そこには、(1)1987年の中止により日本の全死亡率および高齢者の肺炎死亡率が上昇した、(2)ワクチン強制接種は群免疫(herd immunity)により高齢者死亡率を抑制していた…といったことが書かれている。

 つまり、かつて集団予防接種が実施されていた時代には、小・中学生がインフルエンザにかからなかったことにより、子どもたち自身の発症や重症化を抑えていただけでなく、インフルエンザで亡くなることの多い高齢者の発症をも抑える役割を果たし、結果、高齢者の肺炎死亡も抑制されていた、というのだ。

 この論文を紹介している医師は、子どもたちに予防接種を勧めてこなかったことを悔い、反省しているが、高齢者の肺炎死亡率の抑制については、インフルエンザワクチン接種や肺炎予防を徹底するほうが効率がいいような気がしないでもない。

 その理由は昔と比べ、核家族化が最大化している現代、子どもたちと日常的に接している高齢者の数も、かなり減っていると思うからだ。

 ただ、集団予防接種の効用としては、高齢者の肺炎死亡率の抑制以外にも、やはり、免疫力が弱く感染する確率が高い子どもたちに強制的に集団接種することで、社会全体におけるインフルエンザウイルスの総量を抑えられるのは大きい、ということが挙げられる。

 小学校で全児童の約8割がインフルエンザの予防接種を受けると、ほとんど受けない場合に比べて学級閉鎖の日数が約3分の1の7日になるという、慶應義塾大学のグループによる研究結果もある。子どもがかからなければ親がかかる確率も減り、社会全体がかかる率も減るだろう。

 広い視野で見れば、インフルエンザワクチンの接種には、国全体としての流行抑制効果はあるようだ。ゆえに、自分では効果が実感できなかったとしても、真面目に受け続けることは社会人の責任なのかもしれない。

(参考)
厚生労働省 プレスリリース インフルエンザの発生状況について(2018年2月2日)
メディカル・トリビューン「抗インフルエンザ薬は、重症者で肺炎・入院減らす!」(2018年01月18日)
厚生労働省検疫所FORTH 世界のインフルエンザ流行の状況 (2018年1月22日)
日経メディカル「ジャパニーズインフルエンザ、海外で騒動に」(2018月1月30日)