看護師やヘルパーなどの地域の専門職や自治体、社会福祉協議会など高齢者ケアの関係者が地域資源の有効活用を協議するのが「地域ケア会議」。そこに出席する「市町村担当者は地域課題を施策としての対応の検討が求められる」と叱咤する。さらに「法定給付の枠組みにとらわれず、市町村特別給付、地域支援事業、また一般財源を活用して市町村独自の施策を立案することも考えられる」と、市町村を誘導する。

 その活動に必要なのが「規範的統合」となる。規範的統合とは、「自治体が進める地域包括ケアの基本方針が、地域内の専門職や関係者に共有される状態」のこと、つまり情報共有である。

 こうして地域の様々な専門職を方向付けて独自の施策を編み出すことを国が自治体に求め出す。モデル例として「一部の自治体では、市町村職員が地域ニーズの調査結果を分析して計画に反映させており」と叙述した、「一部の自治体」は埼玉県和光市であろう。第4回報告書作成の委員9人のうち、唯一の自治体関係者が和光市の保健福祉部長であることからも明らかだ。

「和光方式」をモデルとして自治体は独自策を考え、費用削減に務めよ、というメッセージである。

サービスを選択するのは「本人」だけに

 第5回目の報告書(2015年度事業、2016年3月公表)では、「介護予防」が、専門職が担う「葉」から地域住民が主役となる「土」に移された(図5)。その通りに政策は動き、要支援者向けの介護予防事業は介護保険の本体から切り離し、自治体が担う「総合事業」へと移行が着々と進んでいる(図6)。訪問介護と通所介護が、総合事業では「訪問型サービス」と「通所型サービス」へと変容している。

 植木鉢モデルへの修正は、植木鉢の土台となるお皿にも及んだ。多くのサービスを受ける出発点のお皿について、これまでは「本人と家族の選択と心構え」と記されていたが、「本人の選択と本人・家族の心構え」に改めた。サービスを選択するのは「本人」だけにした(図5)。

 当然のことである。本人と家族が同格では、本人本位ではないことになる。要介護認定をはじめ、介護保険制度はあくまで本人の心身の衰えに対するサービス提供であり、本人自身がさまざまな介護サービスの中から自由に選択できる。
家族の介護力や資産は第一義的には配慮されない。従来の社会保障制度が家族単位で括られていたのに対し、介護保険が画期的と言われる所以でもある。

 第2回報告書で、1982年にデンマークで提唱された高齢者ケアの3原則が、日本の3原則として記されている。3原則とは、「本人の選択」であり「住み慣れた地位や住宅での生活の継続」と「自己(残存)能力の活用」である。なかでも、本人本位の自己決定は最も重要な要素だ。介護保険が始まって16年後に本人本位にやっと気がついたようだ。