2型糖尿病を放置、あるいは血糖コントロールを怠けていると、命にかかわる病気につながりかねない、というのは周知の事実。最近は心血管系に与える影響だけでなく、アルツハイマー型認知症(AD)や脳血管型認知症を発症するリスクが高いことも知られるようになってきた。

 もともと脳はブドウ糖の一大消費地帯。糖質消費にはインスリンが必須であり、糖尿病の背景にある「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌不全」が脳に影響するのは納得がいく話だ。実際、AD初期には脳の海馬を含む領域で、インスリン濃度が低下していることが知られている。しかも、この現象は2型糖尿病患者に限って生じるのでもなく、脳だけ“糖尿病”というケースもあるらしい。まだ議論の余地はあるものの、一部の専門家はADを「3型糖尿病」と呼び始めている。

 ともあれ、さまざまな状況証拠からADとインスリンとのかかわりは明らか。となれば、ADもインスリンで治療できそうだ、と考えるのは当然だろう。もっとも、インスリン注射では「低血糖ショック」のリスクがあるので、鼻粘膜からゆっくり脳血流にインスリンを到達させる「経鼻インスリン療法」が考え出された。