ダイヤモンド社刊
1890円(税込)

「働く者、特に知識労働者の平均寿命と労働寿命が急速に伸びる一方において、雇用主たる組織の平均寿命が短くなった。今後、グローバル化と競争激化、急激なイノベーションと技術変化の波の中にあって、組織が繁栄を続けられる期間はさらに短くなっていく。これからは、ますます多くの人たち、特に知識労働者が、雇用主たる組織よりも長生きすることを覚悟しなければならない」(『プロフェッショナルの条件』)

 会社のほうとしては、寄りかかりの社員ばかりでは困る。今では、想像もできないことになったが、かつては働く者のほとんどが肉体労働者だった。当然、定年の頃にはくたびれ果てていた。退職後も、それほど長く動き回れるわけではなかった。これに対して、会社のほうは盤石だった。

 ところが今では、働く者の過半が、身体ではなく頭を使う知識労働者である。しかも、企業その他の組織にとって、唯一の意味ある競争力要因は、ドラッカーがいうところの“知識労働の生産性”である。それを左右するものが“知識労働者”だ。会社を引っ張り、定年が延びてもそれ以上に元気なままの人たちである。

 むしろ会社のほうが、競争に負け、あるいは競争に勝っても産業構造の変化とやらに置いてけぼりを食うことがある。あるいは欲に目のくらんだトップが会社をつぶし、あるいは同じく欲に目のくらんだ外国の金融機関のとばっちりを受けて会社がつぶれる。

 しかも、知識労働者が主役になったということは、彼らが、自らの組織に繁栄をもたらすべき存在であるにとどまらず、組織の寿命さえ超えて活躍していくべき存在になったということである。

 したがって、在職中はもちろん、退職後の第二の人生のためにも、新しいキャリア、新しいアイデンティティ、新しい環境の用意をしておかなければならない。

「すべて初めての挑戦である。むずかしいことではない。だが、知識労働の生産性こそ、一人ひとりの人間、一つひとつの組織が成功を続けるうえで不可欠のものである。これからの数十年にわたって、知識労働者として活躍する人としない人、知識経済において繁栄する組織としない組織の差は、歴然となる」(『プロフェッショナルの条件』)

週刊ダイヤモンド