成果の出ないマネジャーが気づかない「部下の本音」とは?
ところが、こういうことを平気で言ってしまうマネジャーは、そのことがわからない。そのことに気づけない。
「あの人が言っていたことは正しいから、私も頑張ろう!」
なんて思うわけがないのです。
ですが、それをやってしまっているマネジャーが、私が観察したところでは8割以上でした。本当に、そういうマネジャーが多いのです。
しかも「上から言われたから」「オレが困る」という空気を漂わせる上司が多い。つまり、部下ではなく、自分の上司を見ている。仕事に向かう「矢印」が部下ではなく、上司に向いてしまっている。自分のことを認めてくれる人、自分のボーナスを上げてくれる人、自分の地位を高めてくれる人に向いている。
それを部下はしっかり見ているのです。
だから、部下はこう思ってしまう。
「どうして、そんなお前のために、自分たちがやらないといけないんだ」
これでは、応援されるどころではありません。
ところが、そういう構図を作ってしまっているマネジャーは少なくないのです。
しかも優秀な部下ほど、「誰がお前のために頑張るか」と思っている。上司はそれに気づかなければなりません。
逆に、「この人のために」と言われる上司は、必ず矢印が部下を向いています。だからこそ、部下は上司を応援し、実力以上の力を発揮するのです。
たとえば、イチロー選手のように、アメリカに行こうが、どのチームに行こうが、周囲に関係なくヒットを打って活躍できるという人がいるのも事実です。どんな環境でも、自己実現のためにまっすぐ走り続けられる人。しかし、こういう人は、本当に数少ない。私も数多くのチームを見てきましたが、100人に1人いればいいほうです。
ほとんどの人は、何かモチベーションが必要なのです。
そんなときに、「オレのためにやってくれ」などと言われると、本当にやる気を失ってしまう。
でも、「あの人は自分たちのために頑張ってくれている」ということになれば、それに応えたい、あの人が喜んでくれるなら頑張ろう、ということになっていきます。
ただし、表面的に「部下のため」と言ってはいけません。それは部下にはわかってしまいます。
それより本気で部下のことを考えることです。部下の気持ちを理解しようとすること。何も言わなくても、マネジャーの本気の姿勢は部下に伝わります。
そのためには、常に「自分がどこに向いているか」を見つめ直すことです。本当に自分はチームのメンバーに向いているか。いつも疑っておかないといけない。人間は決して強くないからです。