優秀なエリートには共通点がある。彼らは「真面目に、我慢して、一生懸命」ではなく、「ラクして速く」をモットーに、効率よく結果を出し続けている。まじめさと仕事のパフォーマンスは比例しない。24年間で5万人以上のクビ切りを手伝い、その一方で、6000人を超えるリーダー・幹部社員を選出してきた松本利明氏の新刊、『「ラクして速い」が一番すごい』から、内容の一部を特別公開する(構成:中村明博)

「一生懸命がんばろう病」は、こう治す!

一生懸命がんばる前に、
すべきこととは?

 日本の大企業から中小企業まで、まったく同じ現象が起きていて、ビックリすることがあります。プランを考える順番が「逆」なのです。

「一生懸命がんばろう病」は、こう治す!松本利明(まつもと・としあき)人事・戦略コンサルタント。外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサージャパン、アクセンチュアなどを経て現職。5万人以上のリストラを行い、 6000人を超える次世代リーダーや幹部の選抜・育成に関与する。その中で、「人の持ち味に合わせた育成施策を行えば、人の成長に2倍以上差がつく」ことを発見し、体系化する。そのノウハウを、クライアント企業にはマネジメントの仕組みとして、社員には具体的な仕事術へと落とし込み提供。24年間で、外資系・日系の世界的大企業から中堅企業まで、600社以上の人事改革と生産性向上を実現する。自らもその仕事術を実践することで、スタッフからプリンシパル(部長クラス)まで8年という驚異的なスピードで昇進する。 現在は、企業向けのコンサルティングに加え、 「すべてのムダをなくし、自分らしく、しなやかに活躍できる世界」にするため、「持ち味の見つけ方・活かし方」を、ビジネスパーソンのみならず学生にも広めている。「仕事術」「働き方」などのテーマで、メディアへの寄稿多数。また「日本企業の働き方・賃金改革の在り方」について、英国放送協会(BBC)から取材を受け、その内容は全世界に配信された。

 ゴールにたどり着く道筋を最初に考え、その通りにするための壁や課題を設定し、クリアしていく手段を考えるのが本当のプラン。プランを立て、検証していくことでPDCAサイクルがまわり、検証するたびに正解に近づいていくものです。

 しかし、9割の現場では、ゴールからではなく、今やっていることの延長で実施することを決め、「一生懸命やればなんとかなるだろう」と考えているのです。

 心理学を学んだコンサルタントのフォルカー・キッツ氏によると、「脳はラクをしたがる」そうです。

 物事を考え、指令を出すのは脳の前頭葉なのですが、前頭葉を使うと脳に負担がかかる。そのため脳は「自転車に一度乗れるようになったら、ずっとラクに乗れるようになる」ようにパターン化し、無意識でもできるようにすることで、脳の疲労を抑えようとします。

 つまり脳には、「今やっていること」「過去成功したこと」を繰り返そうとする性質があるというのです。

 過去の延長線で物事を考えてしまうのは脳のせいなので、仕方ありません。では、どのように考えればいいのでしょうか。

 現状は一旦無視し、考える順番を「逆」にしましょう。ゴールを先に描き、その次に「どうすれば実現するか?」を考えるのです。

 6000名以上のリーダーの特性を分析してきましたが、大きな変革を成功させるリーダーは必ず「ゴール」を先に描いていました。

 一方、現状から考えるリーダーは課長止まりでした。現状の延長線上で考えるほうが堅実に見えます。誰もが予測できる“しみじみ感”があるからです。

 ただし、目標達成が難しくなると大きなプラン変更ができません。現状の延長ラインに乗っているからです。そのライン上で何とかしようとすると、「今の延長線でもっとがんばる」程度の施策しか浮かばなくなるのです。

 現状の延長線上で何とかなるなら、誰も苦労しません。そして計算通りにいかないのは、計算を間違えるより、計算式が間違っていることが大半です。「過去の成功事例」「現状」は考えず、最短でゴールにたどり着くプランを考えましょう。

■参考記事
「5万人のリストラ」から見えた万年平社員の共通点とは?