優秀なエリートには共通点がある。彼らは「真面目に、我慢して、一生懸命」ではなく、「ラクして速く」をモットーに、効率よく結果を出し続けている。まじめさと仕事のパフォーマンスは比例しない。24年間で5万人以上のクビ切りを手伝い、その一方で、6000人を超えるリーダー・幹部社員を選出してきた松本利明氏の新刊、『「ラクして速い」が一番すごい』から、内容の一部を特別公開する(構成:中村明博)
一生懸命がんばる前に、
すべきこととは?
日本の大企業から中小企業まで、まったく同じ現象が起きていて、ビックリすることがあります。プランを考える順番が「逆」なのです。
ゴールにたどり着く道筋を最初に考え、その通りにするための壁や課題を設定し、クリアしていく手段を考えるのが本当のプラン。プランを立て、検証していくことでPDCAサイクルがまわり、検証するたびに正解に近づいていくものです。
しかし、9割の現場では、ゴールからではなく、今やっていることの延長で実施することを決め、「一生懸命やればなんとかなるだろう」と考えているのです。
心理学を学んだコンサルタントのフォルカー・キッツ氏によると、「脳はラクをしたがる」そうです。
物事を考え、指令を出すのは脳の前頭葉なのですが、前頭葉を使うと脳に負担がかかる。そのため脳は「自転車に一度乗れるようになったら、ずっとラクに乗れるようになる」ようにパターン化し、無意識でもできるようにすることで、脳の疲労を抑えようとします。
つまり脳には、「今やっていること」「過去成功したこと」を繰り返そうとする性質があるというのです。
過去の延長線で物事を考えてしまうのは脳のせいなので、仕方ありません。では、どのように考えればいいのでしょうか。
現状は一旦無視し、考える順番を「逆」にしましょう。ゴールを先に描き、その次に「どうすれば実現するか?」を考えるのです。
6000名以上のリーダーの特性を分析してきましたが、大きな変革を成功させるリーダーは必ず「ゴール」を先に描いていました。
一方、現状から考えるリーダーは課長止まりでした。現状の延長線上で考えるほうが堅実に見えます。誰もが予測できる“しみじみ感”があるからです。
ただし、目標達成が難しくなると大きなプラン変更ができません。現状の延長ラインに乗っているからです。そのライン上で何とかしようとすると、「今の延長線でもっとがんばる」程度の施策しか浮かばなくなるのです。
現状の延長線上で何とかなるなら、誰も苦労しません。そして計算通りにいかないのは、計算を間違えるより、計算式が間違っていることが大半です。「過去の成功事例」「現状」は考えず、最短でゴールにたどり着くプランを考えましょう。