最大の問題は、一般労働者の1日の実労働時間として示された「9時間37分」が実は、残業時間の数値である「1時間37分」に、法定労働時間の「8時間」を単純に足し合わせて作った「加工データ」だったことだ。

 厚労省はそうした説明もなしに、加工データを一般労働者の「実労働時間」としていた。

 一方の裁量労働制の人の実労働時間は、調査に基づいた実際の数値だった。

 算出の仕方が全く違う2つの数値を同列に比べて、「裁量は一般より労働時間が短い」という国会答弁の主張の根拠に、政権が使っていたのだ。

 詳細は後述するが、一般労働者の残業時間は長めに出やすい調査手法だったことも明らかになっている。

一般労働の労働時間が
長めに出る調査のやり方

 問題は、「なぜ、こんなデータを厚労省が作ったのか」だ。

 経緯を時系列で振り返ってみる。

 このデータは、2013年に厚労省が行った「労働時間等総合実態調査」(実態調査)の数値が元になっている。

 全国の1万1575事業所に、各地の労働基準監督官が出向いて、一般労働者の残業時間や裁量労働制で働く人の労働時間を聞き取って集計した調査だ。

 12年12月の第二次安倍政権発足の直後から、首相は「世界で一番企業が活躍しやすい国」というスローガンをぶち上げ、経済界が要望する労働規制の緩和に乗り出した。

 その柱の一つとなったのが、実際の労働時間と関係なく、労使であらかじめ定めた時間を働いたことにする裁量労働制の対象拡大だ。

 業務の性質上、実労働時間を算定するのが難しい職種などに適用し、労働時間規制にしばられない柔軟な働き方ができるようにするのが狙いとされ、13年6月に閣議決定した「日本再興戦略」(成長戦略)にも盛り込まれた。