ところが、それ以上にわかりやすくランクを落としている別の業種の企業がある。昨年、総合人気ランキングで1位だったある企業が、今年は総合23位と大幅に人気ランキングの順位を落としているのだ。

 その昨年1位だった転落企業とは「電通」である。実は「みん就」はリクナビやマイナビのような企業側からの就職情報サイトとは違い、ある程度就職活動や企業研究を進めた段階での、より企業について知識が深まった学生たちによるランキングであるところに特徴がある。

 そのようなサイトであるから、見かけの華やかさよりも、企業研究をしてわかった仕事の大変さの方が強くランクに反映される。流行りの言葉で言えば「働き方改革」の必要性を強調する、ないしはされるような企業は、この「みん就」の順位では大幅にランクを下げているのだ。

仕事観の変化が原因ではない
もはや「ワリに合わない」のだ

 私はこの現象は、「世代の性格が変わった」からではないと捉えている。以前は銀行や広告代理店のような人気職業には、給料が高い、周囲から羨望の目で見られる、といったメリットと、職場環境の過酷さを天秤にかけて、それでも学生人気が高いという共通点があった。その人気が落ちたのは、学生たちが給料の高さよりもワークライフ・バランスを選ぶようになったからだという「世代説」があるが、私はそれは違うと思っている。

 そうではなく、銀行も広告代理店も、すでに給料の高さ、社会的ステイタスの高さといった神話が崩れているのだ。時代が変わり、学生の価値感が変わったから銀行の人気が下がったのではなく、銀行の給料ではもうワリに合わない時代がきたことを、学生たちは理解しているわけだ。

 その意味で、銀行の人気ランキング首位陥落はまだ序章であると私は読んでいる。この先、フィンテックやロボティック・プロセス・オートメーションといった人工知能の発展に伴い、より誰にでもわかる形で順位を下げていくだろう。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)