まず、「お前が頑張ったら、俺の立場はどうなる」という言葉。これは、以前の担当であった先輩や上司の成果を、新しい担当が上回りつつあるときに言われるそうだ。本当にこんなことを言う人はいるのだろうかと疑いたくなるほど、もはや、この発言による悪影響は説明不要だろう。

 2つ目は「後任に引き継げる仕事にしろ」という言葉。これは、誰が後任になっても運用が滞らないための指示だそうだが、実質的には「現行業務を変えるな」「業務の質を高めるな」と同義となりがちで、組織の都合を優先した仕事を生むことになる。本来目指すべきは、質を高めたうえでレベルを落とさず引き継ぐことではないだろうか。

 最後は「本業に集中しろ」という言葉である。これは、平日の夜や休日に地域住民と活動を共にしたり、勉強会に参加していると言われる。そもそも、業務外の時間における過ごし方について、上司といえども文句を言える筋合いはないだろう。

 国も地方も財政的な課題を抱え、官民の連携なくして日本は立ち行かない時代となりつつある。その状況下において、官民の交わりに水を差すような発言には、大きなデメリットがつきまとう。

上司の言葉を簡単に責めることはできない

 ものごとには必ず経緯や過去がある。これらの言葉が生まれる理由は、どこにあるのだろうか。そもそも、地方自治体には民間との接触を避ける傾向があり、その理由として癒着を防ぐことがあげられる。特に昔は、「民間と付き合うな」と、上司から直接的に言われることも多かったという。

 法務省がまとめる『犯罪白書』で過去の公務員犯罪を調べてみると、公務員(※国会議員・地方議員・国家公務員・地方公務員を含む)の収賄起訴件数は2016年では22件であるが、その30年前の1986年は210件、40年前の1976年には508件にのぼる。これだけの収賄起訴件数が存在したこと、その後、件数の減少が見られたことに鑑みると、民間企業との接触を回避することは、過去の経緯から理にかなった判断とも言える。

 また、地方自治体が置かれた状況の変化からも、上司の発言の背景が垣間見える。2000年4月に地方分権一括法が施行され、地方自治体はそれまでのように、国の下請けのような立場ではなくなった。その結果、地方自治体は自己決定を任されるようになり、同時にその責任を負うこととなる。