少し米ドル高・円安気味の展開となってきたので、米ドル/円について述べたいと思います。

 これはすでに米ドル安が終り、米ドル高が始まったということなのか? それとも単なる米ドルのアヤ戻しに過ぎないのか?

 そんな米ドル/円の基調転換判定法として、今回は米ドル/円相場と52週移動平均線との関係について述べたいと思います。

米ドルの52週線突破含みは
2011年3月協調介入以来

 米ドル高・円安となり、米ドル/円は、足元79円程度で推移している52週移動平均線(以下、52週線)突破含みとなってきました(「資料1」参照)。

資料1
米ドル高・円安へ基調は転換したのか?<br />52週移動平均線との関係で判定できる!

 実は、このように米ドルが52週線突破含みとなったのは、2011年3月の協調介入後の米ドル反発局面以来なのです。

 ところで、2011年3月は、結局この52週線の米ドル上抜けに失敗したわけですが、この52週線こそ、経験的に米ドル/円の基調転換判断の目安とされてきたものなのです。

 その意味では、最近は2011年3月以来の、米ドル安から米ドル高への基調転換を試す展開になったと言えそうです。

「資料1」のように、米ドル/円のトレンドは、52週線との関係で説明がかなり可能です。

 また、基調と逆の値動き──「資料1」でいうと、米ドル高基調で米ドルが52週線を下回る、または米ドル安基調で米ドルが52週線を上回る場合──は基調が転換したか、いわゆる「ダマシ」のケースだけです。

 この「ダマシ」が1カ月以内といった具合に短いのがこの52週線の特徴です。

新たな米ドル高・円安への
基調転換チャレンジ

 さて、そんな52週線が足元は79円程度での推移となっているのです。

「資料1」のように、この52週線を1カ月以上も安定的に米ドルが上回ったことは、2007年6月から米ドル安・円高基調が展開してきた中では一度もありませんでした。

 上述のように、2011年3月の震災後に、協調介入で米ドル急反発となった局面でも、結局米ドル高は52週線突破前で失速しました。

 経験則どおり、米ドル安から米ドル高への基調転換とならず、米ドルはその後も安値更新となって今に至っているわけです。

 さて、米ドルは最近、そんな2011年3月以来の52週線突破含みとなったわけです。それはすなわち、新たな米ドル高・円安への基調転換チャレンジといった意味として解釈できることです。

資料1(再掲載)
米ドル高・円安へ基調は転換したのか?<br />52週移動平均線との関係で判定できる!

 一定期間この52週線を突破して推移するようなら、米ドルはすでに底を打った可能性が高まるし、まだ底を打っていなかったなら、米ドルは52週線を一定期間上回るのは難しいということになるわけです。

欧州の銀行による
資金調達コスト悪化は一巡、改善傾向に

 ところで、欧州債務危機関連の材料でユーロ下落となる動きが、ひと頃に比べて鈍くなってきたようです。

 何が変わったのでしょうか?

 2011年の年末までと2012年に入ってからとの確実な変化の1つとして、欧州の銀行による資金調達問題があります。まずは、それとユーロとの関係について考えてみましょう。

 そもそも、欧州債務問題や格下げによってユーロが下落するというのは、何らかのユーロ売りフローがあったからです。欧州の銀行の資金調達難は、そういったユーロ売りフローの1つでした。

資料2
米ドル高・円安へ基調は転換したのか?<br />52週移動平均線との関係で判定できる!

 上の「資料2」のように、欧州債務不安が高まったり、格下げが行われると、銀行の信用リスクが高まり、その結果、銀行の資金調達コストが悪化します。

 このため、銀行は基軸通貨、決済通貨の米ドル資金調達を外為市場で行うことが増え、それが米ドル買い・ユーロ売りにつながった面があったわけです。

 このように、欧州債務不安は、銀行の資金調達コスト悪化を通じ、ユーロ売りになっていました。

 ところが、このような資金調達コストの悪化は、実は2011年の年末でほぼ一巡し、2012年に入ってからは緩やかに改善傾向が続いてきました。

 注目されるのは…

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