先日の当コラムで、「フランスを真似して出生率を上げよ」と提言したが、実はもう一つ、フランスを真似してほしいことがある。それは、(特に外国人に向けた)観光産業の振興である。観光産業のポテンシャルは、私達が普段考えている以上に大きいものがあるのだ。

フランス並みに外国人訪問者が増えれば、
GDPは4%アップする

 2010年の世界の外国人訪問者数のトップ5は次表の通りであるが、フランスが断トツの1位を占めている。


   外国人訪問者数(①) 人口(②) ②/①
フランス     7,680       6,279 1.22
アメリカ     5,975     31,038 0.19
中国     5,567   134,134 0.04
スペイン     5,268       4,608 1.14
イタリア     4,363       6,055 0.72
日本(参考)        861     12,654 0.07
(単位:万人、出所:日本政府観光局JNTO) 

 

 しかも、フランスやスペインは国民数(定住人口)を1、2割も上回る訪問者を受け入れているのである。仮に、わが国がフランス並みに外国人を受け入れたとすれば、訪問者が1億4577万人、純増することになる。観光庁の調査によれば、訪日外国人の旅行消費額は1人当たり平均13.3万円(2010年)あるので、フランス並みに訪問者が増えれば、消費が19.4兆円上乗せされることになる。

 2010年のわが国のGDPは総額で481.8兆円であったので、この19.4兆円は実にGDPを4%押し上げる効果を持っている。観光産業のポテンシャルの大きさが、容易に理解されよう。

 しかも、外国人の訪日の主目的は「日本食を食べること」と「ショッピング」が常にトップ2を占めている。日本食の国際競争力の強さはミシュランガイドでも確証されており(3つ星レストランの数では1位が東京、2位がパリ、3位が大阪)、また、ショッピング意欲が旺盛な中国人旅行者(外国人訪問者の買物代平均4.13万円に対して、トップの中国人は8.68万円、次いでロシア人6.84万円。観光庁2010年調査)にとって、化粧品やカメラ、家電製品などのわが国の優れた消費財が競争力を失うことは、当面は考えにくい。このように考えると、わが国の観光産業は大化けする可能性を秘めているのではないか。