藤沢  さて、今日、最初にお聞きしたいことはオリンパス事件についてです。まだ、全貌が解明されたわけではありませんが、オリンパスは1000億円を超える巨額の損失隠しを1990年代から続けていました。しかし、東証は1月20日に記者会見し、債務超過になっていない、悪質性は低い、などの理由で早々と上場維持を決定しました。そして、2月16日には、東京地検特捜部と警視庁捜査2課は、同社元社長の菊川剛氏ら旧経営陣3人と、投資関連会社社長、横尾宣政氏ら指南役とされる4人を逮捕に踏み切りました。
  一方で、ライブドアは、2004年9月期のたった一期分の連結決算において、約50億円の粉飾決算の疑いで、東証はよく調査もせずに速やかに上場廃止を決定しています。まず、東証のオリンパス上場維持について、熊谷氏はどう考えますか?

オリンパスの上場維持は妥当な判断

熊谷  ライブドアとの扱いの違いには、正直唖然としますけれども、オリンパスの上場を維持したことについては妥当な判断だったと思っています。投資家保護の観点からすると、オリンパスのように大勢の株主を抱え、出来高が伴い、今後の事業の見通しが立つ会社をわざわざ上場廃止にする必要は全くないわけですよ。むやみに投資家の株式の売買機会を奪うべきではありません。

藤沢  経営者による粉飾決算で損するのは株主と、会社の財務諸表を信頼してお金を貸していた債権者ですね。上場廃止にされたら、株主や債権者にとってはダブル・パンチなので、粉飾決算に関わった経営者に対するペナルティとしては、上場廃止というのは適切ではないかもしれませんね。

熊谷  「上場廃止にして、悪事を働いた経営陣に罰を与えるべき」という論調が目立ちますけど、実は上場廃止になっても経営者は損しないし、困らないんですよ。この点に関して、世間は勘違いしていますね。上場廃止で損するのは株主なんです。粉飾決算の疑いが掛けられている経営者にとって、怖いのは、その後の刑事や民事の訴訟です。

  事件に巻き込まれると、経営者として従業員の未来は確かに心配になりますけど、例えば、誰だって同じだと思いますけど、退職届を出したあとって、その会社の今後なんて正直どうだっていいみたいな感覚はありますよね。藤沢さんも、今勤めている会社を辞めたら、その会社が潰れようがどうだっていいでしょ? 経営者も一緒で、ぶっちゃけた話、上場廃止云々よりも、今後の自分自身に振りかかる訴訟リスクや、自分や家族の生活の方がはるかに心配ですよ。上場してるかどうかなんて、どうでもいいでしょ。

藤沢  身もフタもありませんけど、おっしゃるとおりです(笑)。