「飛ばし」の張本人を守る時効の壁

藤沢  たまたま、先輩経営者からそういうものを引き継いだ菊川氏らが、あらゆる刑事責任や民事責任を抱え込むというのは、やっぱりかわいそうだという気もしますね。その点、マイケル・ウッドフォード元CEOは、はっきりと「俺は関係ない」と言って、自分を引き上げてくれた先輩を刺しにいったわけです。もちろん、コンプライアンス的に完全に正しいのはマイケル・ウッドフォード氏の方ですが、彼がもう一度社長に返り咲こうとしたときに、意外と人気が出なかったのは、その辺に理由があるかもしれませんね。
   それにしても、ただ引き継いだだけでなく、今回の粉飾や飛ばしをもともと実行した人たちの罪を問うことはできないのでしょうか?

熊谷  刑事責任という意味では、有価証券報告書の虚偽記載の時効は5年だから無理ですよね。オリンパスでいうと2006年以前のものは公訴時効が成立しているわけです。だから、粉飾で逮捕すると言っても、粉飾の原因をつくった10年以上前の旧経営陣には刑事責任は及ばないんです。どうしても逮捕したいとなると、時効が成立していない、たまたま引き継いだ人だけを捕まえるってことになります。引き継いだだけで捕まってしまい刑事責任を問われ、その後に次々と起こる民事訴訟を抱え込むなんて可哀想すぎじゃないですか? それなのに世間は、菊川氏らを標的とし「実刑になってしまえ」と騒ぐ。
   私は、時効で刑事責任が及ばない粉飾の原因を作った旧経営陣が記者会見を開き「私が悪い。菊川氏らは引き継いだだけで悪くない」と弁明するのがあるべき姿と思いますけどね。

藤沢  まあね。そういう菊川氏らオリンパス経営陣をかばう報道がひとつぐらいあってもいいと思います。

※この対談は全4回の連載です。 【第1回】 【第2回】 【第3回】 【第4回】 
                   


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