――はい、そうしたサイトを見たことがあります。

西條 しかし、被災地はすべて流されてしまって通電すらしていない状況でしたので、その仕組みは内陸の恵まれた人しか使うことができず、津波被災地では使うことができなかったんです。そもそもパソコンを使える若者も少ない地域で、現在もインターネットがつながっているところは少ないのが現状なんですね。

 状況の把握を間違えると、方法は機能しないんです。原理というのはそれに沿えば必ず成功するというものではないのですが、それから外れたら必ず失敗してしまう。

 こういう場合に「方法の原理」のような考え方が共有されているコミュニティは、こうした失敗はかなり起きにくくなります。

――具体的には、どうやって使えばいいのでしょうか?

【第3回】<br />組織の不合理はなぜ起きるのか?<br />――合理的に議論するための原理とは

西條 こういう考え方を共有していれば、合理的な議論がしやすくなります。

 たとえば、前回お話した家電の問題について言えば、半壊エリアでは重要な家電はすべてやられていますし、日本赤十字社の支援も受けられずに困っている人たちがたくさんいます。

 それに対して、日本赤十字社や行政にはお金がある。ならば、そうした状況と被災された方々の支援という目的を考えたら、いまからでも遅くないので、方針を変えて、自宅避難宅や「みなし仮設」のほうに家電を支援する、あるいは仮設を出て行く人には家電を持っていっていいですよ、とするほうが合理的ですよね、といった形で議論することができるわけです。

――なるほど。本当ですね。いまからでも遅くないんですよね。

西條 そうですよ。行政で、こういう議論がなされていない、という証拠でもあります。

 もっと言えば、行政や日本赤十字社は「被災者の方々の支援」という大目的からもブレているところがあります。

――というと?

西條 なぜなら、言ってみれば仮設住宅に支援しているのであって、被災された「人」に支援しているのではないからです。もし、「人」に支援するのだったら、その「人」がどこに住んでいようが、すべて流されてしまったことに変わりはないんですから、家電を贈呈すべきですし、仮設を出る際には持っていってもいい、とするはずですよね?

――いや、本当だ。「被災者支援」という目的からブレてる。目的からブレない、というと、何か当たり前すぎる気がしますが、こんな誰もがニュースで聞いたはずのことでも、ブレちゃっているんですね。恥ずかしながら私も言われるまで、そのブレに気がつきませんでした。