いつでも、どこでも、誰でも利用できる健康保険。病気やケガをして診療所や病院に行く場合は、ほとんどの人は健康保険を利用しているだろう。しかし、病気やケガをした原因によっては健康保険が使えないこともある。

 それが、仕事が原因による病気や通勤途中に負ったケガなどの治療をする場合で、健康保険ではなく労災保険(労働者災害補償制度)から補償を受けることになっている。

従業員を1人でも雇ったら
必ず入らなければならない労災保険

 仕事が原因で発生した従業員の病気やケガ、死亡などに対しては、たとえ過失がなくても会社が一定の補償をすることを労働基準法で義務づけている。しかし、会社に支払い能力がなかったり、損害額が高額になったりすると、従業員が十分な補償を受けられない可能性がある。

 そこで、従業員を1人でも雇った事業所には労災保険に加入することを義務づけ、労働者が仕事中や通勤の途中で病気、ケガ、障害を負った場合の治療費や休業中の生活費の補償、死亡した場合の遺族補償などが滞りなく行われるようにした。

 補償の対象になる人は、その事業所で働くすべての労働者だ。正社員だけではなく、派遣社員でも、パートタイマーでも、アルバイトでも、日雇いでも、差別なく補償を受けられる。たとえ不法滞在していた外国人労働者だとしても、業務中の病気やケガには労災保険が適用されることになっている。

 保険料は、健康保険や厚生年金保険などと同様に、従業員の給与やボーナスなどの総額に一定の保険料率をかけたものが徴収される。この保険料率は、労災事故が起こる確率によって業種ごとに決められており、危険な作業を伴うことがある林業・漁業、鉱業、建設業などが高く、室内作業を主とする製造業や販売業などが低くなっている。

 もっとも高いのは「水力発電施設、ずい道等新設事業」の0.89%、もっとも低いのは「製造業(計量器、光学器械、時計等製造業)」「その他の事業(通信業、放送業、新聞業または出版業、金融業、保険業、不動産業)」の0.25%だ。