週末を含めた5日間で、当初の予定を上回る1200人近い来場者を集めたのだから、老舗企業のイベントとしては上出来だろう。
3月7~11日、総合化学メーカーの三井化学は、創業105年の歴史の中でも例が少なく、1997年に三井化学が発足してから初となる単独の展示会「そざいの魅力ラボ」(MOLpカフェ)を開催した。場所は、デザイナーなどの先端的な人種が行き交う東京・南青山の貸しスタジオだ。ライバル会社の経営企画部門の人が来れば、通りすがりの外国人も入ってきた。
骨董通りを少し入ったスタジオを一棟借りし、3フロアを最大限に活用して素材の機能を“見える形”にした。来場者には、コンセプトを前面に打ち出した製品群を触ってもらい、担当した研究者が熱く狙いを語るという趣向である。
最大のポイントは、芸術的価値を優先した日常生活と無縁な参考製品は置かず、どれも生活に密着した製品ばかりを集めたところで、即売も行った。「素材が持つ潜在的な力を活かせば、こういう実用品ができる」と訴えかけてくるような直感的な展示にこだわった。
例えば、三井化学の大牟田工場(福岡県)で生産する世界シェア1位のメガネレンズの素材・技術を転用して、紫外線を当てると色が変化するバングル(腕輪)などのアクセサリー類を並べた。