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グローバル企業のトップは3つのキーワードで行動する
【シリーズ対談】日本企業が世界で戦うために

2018年3月27日
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日本の強みを生かしながら
世界をリードしてほしい

日置:個人的には、世界をターゲットにしたビジネスの基盤を構築・提供・運営する"華やかな"プラットフォーマーと同じ土俵で、日本の伝統的な大企業が勝負しようとしても難しいと思っています。

 それよりは、テクノロジー領域に限らず世界的に強い製品やサービスを提供しているプラットフォーム的な企業に対して、自分たちの強みを生かし、地味かもしれませんが必要不可欠なパーツになることが、日本企業が世界で生き残っていくための一つの道ではないでしょうか。

 もちろん、国内の社会的なインフラをアップデートするとか、ある産業分野に限ったニッチなプラットフォームで主導権を獲るといったことであれば、データを利活用するデジタルビジネスの可能性はあると思いますが。

野坂:それも経営者の意思決定次第ですよね。海外のグローバル企業では、前任者の路線をいったんリセットして、自分たちの持っている資産で10年後にどう利益を出すのかを真剣に考える経営が主流です。

 自前のリソースだけで難しければM&A(合併・買収)で外から取り込むとか、逆に自分たちの会社ごと他の企業グループに入るとか、そういうことを含めてゼロベースで考えて、実行していることが多い。

 トップに就任する前から、経営者としての思考訓練を積んでいるから、それができるのだと思います。

日置:経営人材の不足は各所でいわれています。「日本の大企業には、特定の事業部門を運営できる人材は多くいるが、複数の事業を抱える企業体をグローバルスケールで経営できる人材はほとんどいないのではないか」という会話を日本企業の人とよくするのですが、それに通じる話ですね。

 でもこれは、個人の優秀さうんぬんではなく、そういう環境にいたことがなかったから、育っていないのだと思います。

 事業の持ち方を能動的に変えていく、そして、グローバルという複雑系をマネジメントしていくとなると、しっかりとしたコーポレートの設計図が不可欠です。その中の各ポジションにおいて、何が期待されているのか、どう振る舞うべきか、そしてコーポレートスタッフなど与えられたリソースをどう動かしていくのかを経験し、経営人材としての資質や技量を高めていかなければなりません。

 しかし、その設計図や実際に動かしていくための仕組みが、グローバル仕様に照らして日本企業は緩いと思います。欧米グローバル企業のみならず、グローバルでの活躍目覚ましいアジアの企業と比較しても同様です。そして、この緩さこそが、経営人材を育てるための土壌の弱さにもつながっています。

 これから日本の人口が急速に減っていきますが、日本企業である以上は日本人がその経営を担うべしと私は思っているので、次代を担う人材を育成するための土壌改良に挑んでほしいです。

野坂:食料や次世代エネルギー、医療など日本企業が世界で戦える可能性がある分野は、まだまだあります。日本の強みを生かしながら、ITやデジタル技術を活用して、世界をリードする企業がもっともっと増えてほしいですね。

日置:変化を恐れず、新しいビジネスモデルで海外に打って出る企業が増えれば、日本全体がもっと活性化するはずです。そのためには、野坂さんが指摘されたアジャイルな意思決定に加えて、リスクを取る姿勢も欠かせないと思います。

 ただし、今の日本は、米国のように新しい産業は新しい企業がけん引するという構図ではなく、伝統的大企業が既存事業の傍らで新しい産業への対応を図ろうとしています。これは企業の体質的にも、また国としてのリソース配分という面からも本質的に難しいことではないかと思っています。

 カーブアウトやスピンアウト、スピンオフ、もちろんアライアンスでもよいのですが、これまでの産業構造を大きく動かし、限られた経営資源が分散し過ぎないようにして生産性を高める。同時に、プラットフォーマーとはいかないまでも、ニッチな領域でエッジを利かせ、グローバル市場で戦うことを前提とした企業をたくさん生み出すことで、日本を元気にしていきたいものです。

(構成/田原 寛 撮影/加藤夏子)

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