今年は市場が大きく振れるのではと、本欄では過去に何度か述べた。これは、低インフレ、低金利、中央銀行の超金融緩和という組み合わせによる世界の「同時成長」と「適温相場」の時期が終わり、次の枠組みを模索するとみているからだ。
具体的には、米国の金利上昇にもかかわらず、ドル安傾向になり、ドル円で言えば105円台の水準まで円高が進んだことが代表例である。米トランプ政権が鉄鋼、アルミ製品に輸入関税を導入したことで貿易戦争の懸念はあるにしても、ここまで日米金利差とドル円が乖離するのも珍しい。
2014年から15年にかけて黒田バズーカへの期待から円安が進行したが、そのときのように期待値先行でドル安、円高が進んでいると考える(上図参照)。
それは、米国に続いて欧州の中央銀行も量的金融緩和(中央銀行が国債などを買い入れるという緊急避難的金融緩和)の段階的縮小に向かっていることが背景にある。
18年3月上旬には日本銀行の黒田東彦総裁も、19年度までに(量的金融緩和の)出口を検討していることは間違いないとコメントしたことから、やはり日欧中央銀行も量的金融緩和の終了、ひいては金利上昇が近いのではないかという期待感が高まり、円とユーロはドルに対して強くなったと考えている。
特に、今まで出口戦略の検討は時期尚早としてコメントを差し控えてきた黒田総裁が、再任に向けた質疑応答で出口戦略の具体的なタイミングに言及したことはマーケット関係者としては驚きであり、ドル円が一気に105円台に突入したのも理解できる。
しかし、日本の長期金利は今後1年で0.1~0.2%上昇するとしても、その幅は極めて限定的と思われ、現在の米国の2.7%を超える10年債金利との差を大きく縮めるとは考えにくい。
海外投資家の日銀の金融政策の引き締め→円高→日本企業収益悪化というロジックは、日本株の売買に大きな影響を与えているように見える。18年初から、海外投資家は大きな売り越し(主として先物)であったことが分かる(下図参照)。
今回の日銀の金融政策の変化に対する期待は高過ぎ、それに基づく株価急落は正当化するのがやや難しい。前回の本欄でも述べたように「株価は2月中旬の水準で落ち着きを取り戻すだろう」との見解は変わっておらず、短期的リバウンドを見込む。
昨年10月の総選挙後の株価上昇分が今回の下落で打ち消されており、ここからの下値は当面限られると考えるためである。注目すべきは、19年3月期の企業収益が市場の期待値以下であることが見えてくる夏以降の展開であろう。
(UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパンエクイティリサーチヘッド 居林 通)