実際、まだ正式参入を表明していない2016年秋の段階でも、ダイソンのCEOはEV参入の可能性を問われて「電池技術で新たな飛躍を目指したい」「驚かせたい」と答えている。そして冒頭で紹介したイギリス政府が誤って開示した資料に書かれていた「新しい電池を用いたEVの開発」という言葉だ。

 実は自動車業界が驚いたのは、ダイソンは「全固体電池を採用しようとしているらしい」ということなのだ。

 全固体電池は、現在主流のリチウムイオン電池よりも2倍以上の容量があって、充電時間も大幅に短い。自動車メーカーは全固体電池の開発を進めているが、ダイソンのように2020年には間に合わないという。だとしたら、ダイソンの発売する新型EVは、旧来のEVとはパフォーマンスが違う、新次元の商品になる可能性が高い。

 今回のダイソンの姿勢から学ぶべきことの1つが、新技術の獲得投資である。これはEVに限らず、次世代自動車が開発競争に入って以来、研究開発競争のポイントが変わると同時に、コア技術の獲得方法も変わってきているということだ。

 ダイソンの場合、2015年にアメリカの新興バッテリーベンチャー、サクティー3を買収してから、EVへの参入が現実化してきた。

 さらに、次世代自動車の頭脳にあたる人工知能については、自動車業界の外部の方が技術は進んでいる。アメリカ企業はそれぞれシリコンバレーのITベンチャーと緊密な関係を結んでいる。そしてヨーロッパの自動車メーカーは、人工知能についてはイスラエルに開発拠点を移している。イスラエルは日本からはずいぶん遠いが、欧州からは目と鼻の先。そのため欧州の自動車メーカーにとっては、研究も進めやすいのだろう。

日本企業はダイソンの
「お手並み拝見」ではいけない

 ただ、この点については日本が遅れているというわけではない。そもそもダイソンが日本を最初の電EV発売市場の候補にしている理由は、日本には家電、IT、ロボットなど先端技術がすべてそろっているからだという。

 実際、それはその通り。しかし私が強調したいのは、日本の自動車メーカーが、ダイソンの参入を「お手並み拝見」的な意識で眺めていてはいけないということだ。日本メーカーに望むべきは、ダイソン以上にずっと先を行く素晴らしい商品の開発を進めることだと私は思っている。

(百年コンサルティング 鈴木貴博)