震災後には、いつも問題となる
「二重ローン」問題
それでもマイホームを修繕、再建するための費用工面が必要となれば、被災者向け融資を利用するなど、新しく資金融資を受けるほかないのが現実です。
建物再建に先立つ解体は原則として自己負担ですが、阪神大震災の場合と同様、この東日本大震災でも、解体費用だけは公費で負担してもらえることになりました。とはいえその後の再建はもちろん、自己負担です。
こうなると、もっとも深刻なのは、前述した住宅ローン返済中の世帯の被災ということになるでしょう。最悪の場合、二重の住居費負担という、家計にとって深刻な状況に陥ることもあります。これが「二重ローン問題」といわれているものです。
この問題への対応として、個人債務者が自己破産による不利益をこうむることなく債務免除などを受ける「個人債務者の私的整理ガイドライン」も、震災後に設けられました。
これは「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」という組織が発表したもので、組織自体は政府と全国銀行協会が共同設立、個人の方を対象に債務整理を円滑にすすめる目的で設立されました。
ただ「私的整理」は、「自己破産」などの法的整理と異なり、法的な根拠がありませんし、債務免除のための要件は非常に厳しいものです。2月時点ではこのガイドラインに基づいて弁済計画が成立した事例は自動車ローンの2件にとどまっており、住宅ローンの事例はありませんでした。債務免除が認められるには、銀行など債権者の債権放棄が必要ですが、重要な資産である住宅ローンについて、債権者も簡単に応じる訳にはいかないのでしょう。
私たちは、こうした現実を踏まえたうえでマイホームを検討した方がいいでしょうし、また一方で住宅ローンを貸し出す金融機関が、「震災で自宅を失っても住宅ローンは残る」ということについて、注意喚起することが求められるのではないでしょうか。
被災時に住まいを失っても、住宅ローンは残り、その後も返済を続けなくてはならず、一方で暮らしを立てていくには新たな住居費も必要になる。これが被災時に直面する家計の現実だと充分に認識することが、地震被害に備える出発点になります。
そして、地震被害に備えるほぼ唯一の選択肢が「地震保険」なのです。
保険とはソントクではなく
万が一に備えるもの
現時点で、充分な貯蓄があり、被災後もそれで生活再建費用を充分に賄えるのであれば保険はいらないかもしれません。しかし、住宅取得をしたばかりで住宅ローンがまだたくさん残っている世帯は、同時に貯蓄が少なくなっている世帯でもあります。こうした世帯こそ、失った家の住宅ローン返済が残るリスクを回避するために地震保険の契約が必要です。
保険と言うと、とかく「ソン・トク」などで語られがちですが、保険の意味とは本来、貯蓄等で対応不可能な将来の不測の事態に対して、家計が被る壊滅的なダメージを回避するためのもの。手元の貯蓄でカバーできる程度のダメージであれば、保険料を支払ってまで、わざわざ加入する意味はありません。
一方で地震保険は、まさに地震による被害による家計の破たんリスクを回避するためのもの。保険の王道をいく、リスクマネジメントの意味合いが強い 保険といえるでしょう。
とはいえ、地震保険には、火災保険などと違い独特な特徴があり、それらをよく知っておかなくてはなりません。これについては次回、お伝えします。
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