不況で若者は本当に保守化するのか?
起業希望者の3割は35歳以下の若者
景気が悪くなると、若者たちがますます保守化すると言われる。「寄らば大樹の陰」で、大企業・安定企業への就職を希望する。卒業後に正社員になれなかった若者が非正規化して、低所得層を累増させていく……日本経済の未来は真っ暗。
いかにも、日本を自虐的に見たがる人の好みそうなストーリーだ。
日本社会には、別の鉱脈があることを忘れてはいけない。新しく起業をしたいと志す人数は、100万人を超えている。確認できる統計データでは、2007年までに起業を希望する人が135万人もいる(図表1参照)。
2002年は144万人、1997年は239万人もいた。最近になって総数が減っていることは事実だが、まだ膨大な起業予備軍がいることを軽視してはいけない。
興味深いのは、135万人の起業希望者の中で、35歳以下が48万人で、全体の35%の割合を占めていることだ(図表2参照)。人数としては、35~45歳未満の起業希望者も多く、43万人で32%となる。
135万人のうち、男性は108万人(80%)で、女性は27万人(20%)という割合になる。若い人は、人生の中で失敗を相対的に恐れず、チャレンジすることを希望するということだ。
一般的に、人は年をとるほどに自分で稼げるスキルを高めるが、その半面、地位に甘んじて冒険はしなくなると言われる。
しかし、起業を志望する人の所得分布を調べると、すでに相対的に高収入を得ている人たちが、さらに自分の稼ぎを増やそうとして起業を望んでいる。必ずしも、起業志向が「無謀な賭け」だと切り捨てるのは、正しくない。