世界的に標準化されているGDP統計(SNAと呼ばれる統計の一部)は、戦間期から第二次大戦直後にその基礎が開発されたもので、これらの統計は暗黙裡にモノづくり中心の社会を想定している。

 少しずつ改訂が加えられているものの、いまや先進国経済のモノサシとしてそぐわない部分がだんだん増えている。

「他人に何かしてもらう」ことに価値を感じる人は、美容院がシャンプー要員を減らして自動洗髪機を導入したり、学校が教員を解雇してビデオ授業ばかりにしたりすることを望まないだろう。

 日本は「おもてなし」の国らしいが、「おもてなし」とは「対価を受け取らずに他人に何かをしてあげる」ことである。

 人々がそうしたことを高く評価するようになると、GDP統計で測った経済成長率は低下する。

 だがそれで私たちが貧しくなるわけではない。実態はむしろ逆だろう。

物価が上がらないのは別の原因
「デフレの罠」ではない

 それでは過去20年間にわたって物価が上がらないのはなぜなのか。

 これも資本主義の長期停滞のためなのか、「デフレの罠」にはまってしまったからなのではないかという人もいるだろう。

 しかし私はもう少し常識的な説明が可能だと考えている。

 図3で、左パネルは、国内企業物価指数の推移を示したものだ。

 企業物価指数は、原則としてサービスを排除して計算されている。ここでは工業製品に関する公式の物価指数に加え、それから価格変動の激しい市況品とIT関連機器を除いて再集計した指数を示している。

◆図表3:企業物価と消費者物価の推移(2015=100)

(注)左パネルの市況品は燃料品、石油化学系基礎製品、鉄鋼、非鉄金属。右パネルのIT関連品はサービス(携帯電話接続料など)を含む。
(出所)日本銀行「企業物価指数」及び総務省統計局「消費者物価指数」をもとに作成
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