「AIの自己分割」とは?

 こうして「別人となったAI」は、自分で作った問題もまったく新しい問題として取り組むことができます。
 そして、答えを知らない自分の出した解答を、答えを知っているもう一人の自分が採点を行うというわけです。
 この仕組みを「AIの自己分割」と呼びます。

『マルチナ、永遠のAI。――AIと仮想通貨時代をどう生きるか』では、AIを搭載した「AIDON」(アイドン)という名のペットロボットが登場します。

 しかし、「AIDON」は、最初は何もできない、ただのガラクタのような存在です。
 ところが、歩く、走る、吠える、眠る、お手、おねだりをするといった「分類されたひな形」の動きができるようになるまでディープラーニングをさせると、やがては本物と区別のつかない愛らしい「犬」に成長します。

 ただし、この「AIDON」の訓練や、その動きの合否判定を人が24時間、365日観察するのは現実的な話ではありません。

 こうした動きを伴う学習の場合には、片方のAIが目的に応じた動作を行い、もう片方のAIは、その動作をビデオ映像や、内部的な3D空間によるシミュレーション映像として見ることで、「分類されたひな形」に合致した動きなのかどうかの合否判定をします。

 そうした作業を合格するまで、もしくは、合格してもスコアがより改善するまで何回も何回も繰り返します。
 結果、ペットロボット型AIは、人の観察という手間を省いて、自ら本物のペットのように成長することが可能なのです。