復興の究極の目標は、県民ひとりひとりの生活や仕事が安定する「一人一復興」だと話す逹増拓也・岩手県知事。そして国に対しては、ただ単に被災地の要望を吸い上げて、それを統合して復興計画を作れば良いというわけではないと苦言を呈す。これから本格的に復興が動き出すが、岩手県、東北、日本全体の姿がどうなるべきかという視点こそ大切だという。
(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)

沿岸部はまだ更地
復興は初期段階

たっそ・たくや/1988年、東京大学法学部卒業、外務省入省。1991年、米国ジョンズ・ホプキンス大学国際研究高等大学院修了。1996年、衆議院議員。2007年4月より岩手県知事(現在2期目)。
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――震災から1年経つが進捗は。

 県で立てた8年計画の最初の1年が終わろうとしているが、沿岸部には更地の風景が広がり、復興はまだ初期の段階といっていい。

 とはいえ、この1年で応急復旧はかなり進んだ。仮設住宅の建設と入居、そしてがれきの仮置き場への移動はほぼ完了したのだ。

 仮設住宅に暮らしている人や、同じように不自由な生活を送っている人が約6万人もいる。基本的なインフラだけではなく、教育や医療、福祉など被災者それぞれが直面する課題に全面的、総合的に漏れがないように対応してきた。

――産業面はどうか。

 水産業関係は、直せるものは直して使おうと進んでいる。養殖施設などは共同で使ってもらっている。船や道具さえあれば海に資源がある。主力のサンマの漁獲高は2011年末で前年に比べ約7割まで回復している。次は、水産加工工場などの本格的な再稼働が必要になる。

 商工業関係では、多少不自由ではあるが仮設の店舗で営業が始まっている。

 商工会議所・商工会の調査では沿岸部の1万3000の事業者のうち7000が被災したが、4000が事業を再開するまで回復した。