デジタル家電の価格が新次元に突入した。
DVDプレーヤー一体型32インチ液晶テレビが4万9800円――。2月20日、流通大手のイオンが1万5000台限定で売り出した超格安薄型テレビは、わずか4日間でほぼ完売となった。韓国サムスン電子製の液晶パネルを使用したノンブランド製品だが、「32インチでDVDが見られて5万円以内、という顧客の要望を実現した」(イオン広報)ことで大ヒットとなった。
ディスカウントストアのミスターマックスでも、2月17日から4万9780円の32インチ液晶テレビのネット販売予約を開始したところ、500台が5日で完売した。現在追加予約を受け付けているが、入荷まで3ヵ月待ちの状態だ。この製品も台湾のODM(相手先ブランドによる設計・製造)メーカーによるノンブランド製品で、13~14万円する国産ブランドの3分の1強の値段である。
薄型テレビだけではない。パソコン(PC)では、ミニノートPCに続いて、今度はデスク型で「100円PC」が登場した。
仕掛けたのは米デルだ。もともと4万円弱の製品が、ソネットの光ファイバー回線を新規契約すると100円になるという期間限定のキャンペーンを展開、1週間足らずで予定の300台を完売した。
PCシェア世界1位の米ヒューレット・パッカード(HP)は、同社としては初めて、2万円台の法人向けデスクPCを投入した。こちらは期間限定ではなく、「これまで手つかずの5万円以下の市場を新規開拓する」(前田悦也・日本HPクライアントソリューション統括本部デスクトップビジネス本部長)のが狙いだ。発売後3日間の売り上げでは、従来モデルの5倍に達しているという。
これらの薄型テレビやPCは、在庫処分で安くなっているわけではない。顧客のニーズに合わせて機能を絞り込む一方、ODMメーカーの活用やグローバル展開する規模のメリットを生かして、この超低価格を実現しているのだ。
一方、国産ブランドは在庫処分で投げ売りしていた従来製品の倍の14万円前後の価格で、32インチ液晶テレビの新製品を投入し始めた。だが、消費者の値ごろ感が一段も二段も下がっているなかで、「新製品には単価を上げる神通力はもうない」(家電量販店関係者)。
高付加価値で価格を維持してきた国産ブランドが戦略を見直さなければ、今年は、ノンブランドや海外勢にとって飛躍の年になるかもしれない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)