また、東京都内のメンタルクリニックで精神科医として毎月数百人の生活保護当事者と接している松尾徳大氏は、1人の臨床医として、日々接する患者たちの生活ぶりの劣化に心を痛めている。松尾氏によれば、比較的若年で基礎疾患もない患者の、自殺ではない突然死が増えている印象があるという。

 思い当たる背景は、2013年以来の生活保護基準引き下げと、そのことによって貧困になる食生活と生活環境だ。生活保護世帯で、節約の最初のターゲットになりやすいのは食費、ついで光熱費である。食事は炭水化物中心の「コストパフォーマンス」重視型になりやすい。「せめて、この部屋だけは」の冷暖房は、ヒートショックのリスクを高めやすい。

 また松尾氏によれば、生活保護への差別・偏見を苦にした「死にたい」という訴え、また自殺の実行が「増えている印象」ということだ。「医療人としても人道的見地からも、こんな事態を見て見ないふりはできません」という松尾氏の期待は、もちろん高木副大臣が保護基準削減を撤回することだ。

子どもたちの声と姿を届けたい
シングルマザーたちが語ったこと

厚生労働副大臣室にて、生活保護当事者らとの会談を終えた高木美智代・厚生労働副大臣

 高木副大臣は約45分にわたって、4名の当事者と面談した。今回は、2人のシングルマザーの訴えを紹介する。

 1人は、福島市のミサトさん(仮名)だ。ミサトさんの娘・アスカさん(仮名・19歳)は、中学時代に努力を重ねて給付型奨学金を獲得したが、高校に進学したばかりの4月、その奨学金を福島市役所に収入認定(召し上げ)されてしまった。すでに、福島市の対応を違法とした地裁判決は確定しているが、アスカさんが失った高校生活と10代後半の時間は戻らない。

 ミサトさんは、ときに涙にむせびながら、母娘が経験した辛苦を語った。アスカさんが「努力しても報われないなら、何もしないほうがいい」と語ったエピソードを紹介するとき、ミサトさんは言葉を詰まらせ、嗚咽しながら言葉を1つ1つ押し出していた。

 しかし、ミサトさんは姿勢を正し、「こんなことは、二度と誰にも起こってほしくありません。母子加算を引き下げず、大学進学を応援してほしいです。生活保護だからといって、教育も最低限度しか許されないのであれば、貧困の連鎖は断ち切れません」と結んだ。