理容室に「遠いけれど行こう」とは思わない

立三さんは、まず客単価5000円前後のレストランと理容室は何が違うのかを考えたそうだ。

値段は大体同じくらいで、しかもレストランも理容室も同じ「ナマモノ問題」(連載第10回参照)のビジネスだが、1点だけ根本的に違うのだと説明してくれた。

それはリピートのサイクルだった。

例えば、レストランなら、誰もが1度食べればもう半年くらいは食べなくてもいいような個性の強い料理を出せば、その強い個性と味に惹かれ、お客さんは遠路はるばる半年に1度は来てくれる。

そんなお客さんを十分な数見つけられれば商売は成り立つ。

つまり、レストランはそれほど地域密着でなくとも成り立つのである。

逆に、それを狙って、徹底的にインパクトの強い料理を出すという作戦も可能だ。

一方、理容室は、今月は「ザンギリ」で髪を切って、後は別の店に行き、半年後に思い出したように、また「ザンギリ」に来るということは珍しい。

理容室に来てくれるお客さんは(基本的に毎月)通ってくれるというのが基本で、「遠いけれど久しぶりに行こう」とはなりにくいのである。

だから、理容室の場合、お店を選ぶポイントの中では、地理的な距離がかなり重要なのではないかというのが立三さんの仮説だった。