では、2人が加入した保険の「利回り」はいくらになると思いますか?

細かい計算式は省略しますが、30歳のLさんのほうは30年間の利回りは年0.98%、20歳のMさんのほうは40年間の利回りが年1.03%です。

この利回りは、銀行預金に比べればかなりいいのは事実ですが、依然として複利パワーが十分に発揮される水準とは言えません。若くして加入したMさんのほうがわずかにトクをしているように思えますが、「時間」の要素も考慮すれば、Lさんより10年も長くにわたって1.03%という低利回りに縛られているという見方もできます。

あなたが働いて得た大切なお金を、人生の30年とか40年にわたって、このような低い利回りに固定してしまう金融商品は、資産形成エンジンのパーツとしてはいささか力不足だと言わざるを得ません。

学資保険にも「同じトリック」が隠されている

じつのところ、この返戻率という数字は、資産形成を左右する利回りや運用期間とは何の関係もない、日本の保険業界がセールスのためにつくった独自の指標です。

一方で、貯蓄型保険を検討するクライアントさんからは、こんな質問をいただきます。

「とはいえ……返戻率が高い商品のほうが、やっぱりよくないですか?」

みなさんも「そりゃ、低いよりは高いほうがいいでしょう!」と思いますか?
いいえ、決してそうは言いきれません。この日本独自の返戻率という数値は、資産形成エンジンのパワーを判断するうえでは、まったく不向きな指標です。

生命保険ばかりを槍玉に挙げていると思われてもいけませんので、今度は学資保険の例で考えてみましょう。なお、学資保険とは一定の保険料を支払うことで、払込額以上の学資金を受け取れるしくみです。保険という名前がついていますが、保険本来の保障の機能は低く、終身保険以上に貯蓄・運用にフォーカスしている金融商品です。

30歳のNさんは、0歳の息子さんのために学資保険の契約を検討しており、2社の商品まで候補を絞り込みました。みなさんなら、どちらを選びますか?