ベンチャー起業物語『もしも落ちこぼれが社長になったら…』(ダイヤモンド社刊)で知られるネット通販支援の「もしも」は、ネットショップ構築の新しいシステム提供を開始した。このサービスは初心者でもショッピングサイトが作れるところに特徴がある。利用者はショップの名前やURLなどを決め、もしもが取り扱う2万点以上もの商品から売りたい商品を自分の店に並べる。簡単にインターネット上に自分の店を開店させることができるのだ。
もしもが提供するネットショップはドロップシッピングといって、小売店が在庫を持たず、メーカー直送で販売する形態をとっている。自分で価格を決められる上、メーカー等に発注をかけたものはすべて買い手が決まっているので在庫が生じない仕組みになっている。在庫のリスクが少なく出店の費用はほとんど生じないのが、もしもなどが提供するドロップシッピングの魅力だ。
以前からもしもはショップを構築するサービスを提供しているが、今回のシステムはより簡単に店をアップロードできる点やSEO対策強化などに違いがあり、初心者、特にネットに不慣れな高齢者でも使えるように配慮している。
しかし、店を開くのと売上があがるのは別である。ドロップシッピングを始めた人の中には、1ヵ月で月商170万円を達成している人もいる。しかし、これはごく一部であり、まったく売上があがらない人がいるのも現実だ。ネット上の店はリアル店舗と同じで、店を出しただけで大きな利益を得ることは不可能に近い。集客をし、来訪した顧客がカートに商品を入れ、レジに進むまでにはいくつかの仕掛けが必要になってくる。
具体的には、SEO対策や検索連動型広告などの基本的な手法のほか、サイトのコンセプトのつくり込み、商品の厳選など、集客にはさまざまな方法がある。この中から、自身に適したものを採用し、進めていく必要があるのだ。先の1ヵ月で月商170万円達成した人は2週間で約300ページを作成するなど、サイトの制作に多大な労力をかけている。
「自分の店で扱っている商品がテレビで紹介され、一気に売上が伸びることもあります。が、これはたまたま当たっただけで、常に店で扱った商品がブームになるとは限りません。本格的にネットビジネスに取り組むのなら、このような単発的な方法はおすすめできません」(もしも 広報)
ネットビジネスにはギャンブル性の高い手法も存在するが、確実に収益を上げていくのなら、相応の工数か広告宣伝費などの費用、少なくともどちらか一つを投じなければならない。加えて、アクセス解析などを通して、これまでの手法の見直し、新たな対策の立案・実行と、PDCAサイクルをまわすことが必要なのである。
とかく、ネットビジネスというと「月に100万」「働かずに……」などの言葉が並び、少ない労力で多くの収益を得られる魔法の杖が存在するかのように思われがちだ。が、単発ではなく継続して売上を上げていくには基本的な取り組みをコツコツと積み上げていかなければならない。また、事業規模を大きくしていくにはリスクをとらなければならないこともある。これらはいずれもリアルの世界と同じなのである。
(江口 陽子)