「レベル0」と「レベル1」とは何か

 ひとつは、「レベル0」の場づくりだ。既述の通り、挑戦には「それでいいんだよ」と背中を押す「場」や機会が必要だ。事業プランができてから、起業してからの「レベル1」以降の支援も意味はあるが、多くの場合、そもそも挑戦の数が足りない。実は素晴らしいアイデアも志も、個人の中にたくさん埋もれている。

 この「レベル0」のアイデアや人を育てる機会を生む仕組みづくりをしようと、世界中で試みが始まっている。欧州では自治体を中心に、地域の対話の機会を生み出す 「フューチャーセンター(Future Center)」が企業や市民を巻き込み始めた。他にも、オランダから始まった、社会起業を多く輩出する共同オフィス「HUB(ハブ)」が世界各地に展開を始め、東京でも生まれようとしている(HUB Tokyo)

 米国シアトル市の「ネイバーフット・マッチングファンド(Neighborhood Matching Fund)」もユニークだ。公園などの公共スペースをよくする大小のプロジェクトを市民から募集し、実行のために市民自らが提供する労働・資金・資材に、それに見合う資金を市側も交付する、という仕組みだ。この約20年で、シアトル市内のあちこちで、個性豊かな、自発的な進化が生まれている。

 もうひとつは、民間ですでに生まれている“変化の火種”の成長に、政府が加担することだ。たとえば、オバマ政権が取り組んでいるSocial Innovation Fundなどである。これは、各地で始まった、市レベルで実績のある、NPOや社会起業のプログラムの「スケールアウト」(他地域展開)を、効果的に政府が支援する、というものだ。