すでに実績のあるモデルを探す 

 このとき、政府は、自ら新たな公共サービスを提供しようとせずに、すでに地域で実績のある、よいモデルの自律的な展開を支援する。ここでキーになってくるのは、各地域にある、優れた地域の中間支援団体(『社会起業家になりたいと思ったら読む本』にも登場するREDFVenture Philanthropy Partnersなど)を選定すること。また、これらの団体に、政府からの資金援助を呼び水に、民間からも資金を集めること、つまりマッチングファンドとしての役割を義務づけることだ。

 こうしたファンドに加えて、米国政府のプログラムアメリコープ」(AmeriCorp)の存在も見逃せない。どこのNPOも他地域に展開するには、経営資源、特に人材が足りない。そこに、アメリコープから派遣される、熱意あふれる学生たちが、約1年間政府に生活費を支えられ、“ギャップイヤー”を利用し、NPOで働くプログラムを活用する。

 すでに特定の地域で実績あるNPOが、他地域での展開を始める際、現地のアメリコープの学生の働きや、彼らの地域での知見やネットワークを得て、よりスムーズに展開する一助となっている。

 “担い手”となる人たちの起業家精神を引き出しながら、どうやって新たな政府と市民の関係性を築けるか。まだ世界中で試行錯誤の最中だが、社会のイノベーションにとって、まさに要となる部分となる。


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――未来に何ができるのか、いまなぜ必要なのか

デービッド・ボーンステイン、スーザン・デイヴィス著
有賀裕子訳、井上英之監修

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