もし僕が「少年野球のコーチ」になったら……?

 何か新しい物事をはじめるとき、それを継続できるかどうかは、「最初の印象」に大きく左右される。少なくとも僕個人はそうだ。

 たとえば、小説でも漫画でも、最初の導入部分を読みはじめて面白くなければ、すぐに本を置いてしまう。ゲームなども、少しプレーしてみて「おおっ!」という感覚がなければやめてしまうことが多い。もしかしたら、後にハラハラドキドキする展開が待っているのかもしれないが、そこまで待てないのだ。僕と同じようなタイプの人は、たくさんいるのではないだろうか。

 勉強に関しても同じことが言えるだろう。基礎となる初歩段階の内容をマスターして、「わかるぞ!」という手応えをつかめれば、次の段階にステップアップしても、興味を持って積極的に取り組める場合が多い。「この先はどうなるのかな?」と、自ら理解しようとする意欲も湧いてくる。

 しかし、最初につまずいてしまうと、それ以降の内容は、どんなに丁寧に説明されてもチンプンカンプンだ。小学3年生で習うことを理解していないのに、5年生の授業についていけるわけがない。そうなってしまった子どもが、勉強を嫌いになってしまうのは当然だろう。

 野球に関しても、同様のことが起きている可能性はないだろうか。つまり、もっと最初の段階で「野球は楽しい!」と思ってもらえれば、その後も続けてくれる子どもが増えるのではないか。

ソフトバンク和田投手「もし僕が少年野球のコーチなら」

 僕の場合は、野球に対する「第一印象」に非常に恵まれた。だからこそ、野球をしている子どもたち・これから野球をはじめる子どもたちには、一人でも多く、僕と同じような経験をしてほしい。このときの「楽しい!」という気持ちは、その後に厳しい練習を「続ける」うえでも、強い味方になってくれるはずだ。

 あくまでも想像上の話だが、もし仮に、僕が少年野球の指導者になったりしたら、まずは子どもたちにこの「楽しさ」を共有してもらうことを最優先するだろう。どんな初心者でも必ずボールやバットに触れる時間を十分に用意し、ボールを投げたり、バットで打ったりという単純動作の面白さを体感してほしい。

 僕の子ども時代には、1年生から6年生までを合わせると40~50人以上いるような大所帯のチームも珍しくなかった。そうなると、下級生はどうしても球拾いだとか声出しに回る機会が多くなってしまう。