写真=丸尾隆一(東北ユースオーケストラ) 宇宙大使☆スター(石木ダム)
3月の坂本龍一の動静はまさに怒濤。
2月のベルリン国際映画祭審査員のためのドイツ滞在からフランスへ。この3月初旬のフランスでミニ・ツアーを敢行した。メス、パリ、ナントの3都市で計6回のコンサートを行なったのだが、それが終わると今度は即座の日本への移動。ニューヨークの自宅に帰る日は遠い。
日本での公の場での最初の行事は、銀座のAppleストアで行われた、映画『Ryuichi Sakamoto:CODA』のDVD、ブルーレイ、配信での発売決定記念の対談トークイベントだった。
対談相手は『CODA』の監督である、スティーヴン・ノムラ・シブル氏。これまで東京やベネチア、先月のベルリンなど各地の国際映画祭でもトークをしているだけにぴったりと息が合ったトークが披露された。
映画の根幹にかかわる津波ピアノやガン療養の話、そしてアルバム『async』制作の舞台裏など、貴重な話も多く話されたが、なかでも昨年9月にベネチア映画祭で、坂本龍一というアーティストにもアルバム『async』にも大きな影響を与えたソビエトの映画監督タルコフスキーの子息と出会い、モスクワ郊外にあるタルコフスキーが映画の撮影にも使ったコテージに招待されたというエピソードの披露にはわくわくさせられた。
そのコテージには調律されていない古いピアノもあるそうで、近い将来にその場所とピアノから新しい坂本龍一の音楽が生まれてきそうな予感もする。
その『CODA』はすでに世界20か国以上で上映、あるいは上映予定が決まっているそうで、多くの映画祭にも招待されているそうだ。
坂本龍一は、「コンサート・ツアーでいろんな国に行くのは大変なことだけど、こうして映画作品が各国で公開されていくということは、映像と同時にぼくの音楽もまたいろいろな国に連れていってもらえるということなのでうれしい」と語った。
シブル監督によると、監督が初めて坂本龍一にドキュメンタリー映画を撮らせてほしいと頼んだのは6年前のニューヨークでのトライベッカ映画祭で初めて出会ったときだったという。
この4月に行われる今年のトライベッカ映画祭でも『CODA』の上映と、両者によるトークイベントが行われる。
シブル監督いわく「ふたりでのトークは回を重ねるごとに坂本さんのツッコミに磨きがかかってきて、なんだか漫才コンビを組んでいるような気になる(笑)」というほど盛り上がりを見せるので、今後も機会があればぜひまた日本でも実現してほしい。