しかし、安心安全が重視されるような生活に不可欠なサービスだからこそ、その価格を下げることは国民全体にとって大きなメリットになり、地域を問わずセーフティーネットの存続を可能とする。

 衣料業界は比較的に規制が弱いため、既にユニクロなどがコストを大きく押し下げた。もちろん、既存システムにおける利害関係者に対して、経過措置などの配慮は必要に応じてなされるべきだ。しかし、国民全体を守ることと、利害関係者を守ることを天秤にかければ、規制を緩和すべきかどうかの答えは明白ではないか。今は幸いにも、テクノロジーの進化やシェアリングエコノミーなどの追い風も吹き、コスト削減の手法は多様化している。

一人ひとりの人間の幸福度に着目すべき

 避けることのできない人口減少を悪と掲げ、都市部への人口流入を批判することは簡単である。しかし、国民一人ひとりの幸福度がどう満たされるのかは、人口の増減以上に突き詰めるべき課題だろう。

 出生数が減少し続け、1000年後に日本人と日本国は存在しないという説を唱える人もいる。筆者はこれについては意見を異にするが、仮にそうなるとしても、むこう1000年の間、国民一人ひとりが幸せに暮らせたのであれば、悪いことではないと思う。国家は存続することが目的なのではなく、一人ひとりの国民に幸せをもたらす手段として在るべきだからだ。

 全てのものには繁栄と衰退の絶えざる循環が存在する。鎌倉時代前期に平家物語で語られた「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」とは、今もなお変わらない世の中の本質を鋭く捉えている。盛者必衰という真理の前で、人口や経済の拡大に対する過度な執着や、縮小に対する悲観論は、時代とともに移り変わる人々の新しい生き方や、幸福の在り方を見失うことに繋がってしまうかもしれない。

(株式会社ホルグ代表取締役社長 加藤年紀)