一方、昭和50年代から日本人を主流とした観光客が錦市場を訪れるようになる。京都錦市場商店街振興組合によれば「日本人観光客は漬物や湯葉などを買い物した」という。だが半面、鮮度を気にしての「見学のみでの素通り」(『京の庶民史』)もあったようで、「売り上げの伸び悩み」に頭を痛める店もあったと記されている。地元客の高齢化と市場の観光化は、この頃からの課題だったのだ。

観光客と地元客のニーズは相いれない

 同著の調査から四半世紀近くが過ぎた現在、2010年以降に本格化するインバウンドツーリズムを背景に、錦市場の主要な客は外国人客に入れ替わった。

 時代の変遷に翻弄されるのが、錦市場の宿命なのだといえるだろう。だが、各商店の「時代の変わり目」を察知しての“ビジネスモデルの転換”は見るべきものがある。

小分けで安価な商品に外国人客が飛びつく Photo by K.H

 もともと、保存の効く菓子類などを除き、生鮮品や日配品は観光客には売りにくい商品でもある。ところが錦市場には、そんなハンデを克服する商店が多い。カギとなったのが、商品を串に刺しての一本売りだ。この錦市場では、ウナギ、ハモ、タコ、スズメ、だし巻きタマゴなど、ありとあらゆる食材を串に刺して売っている。

 外国人客も旺盛な食欲を隠さない。地元客なら自宅に持ち帰って切り分けて食べるだし巻きタマゴも、店頭で速攻かぶりつく。中国人客にとって、1本1500円という価格も高くはないようだ。

 店頭商品をあえて小分けパックにして売る店も多い。刺身もまたその場で食べられるような小分けで売られている。筆者はハモ寿司が2切れ入ったパックを200円で買った。この商店街では「100円」「200円」という小額の価格帯が目についたが、これはポケットから取り出しやすい金額でもある。