グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏が、その圧倒的な経験の全てを込めた新刊、『どこでも誰とでも働ける』が発売されました。
起業家・けんすう(古川健介)氏、YouTuber・ヒカキン氏など、新時代の担い手からも絶賛されるほか、各種メディアで大きな話題を読んでいます

今回は同書より、尾原氏が12の職場で学び身に着けた「会議術」を紹介します。

人を動かし、人を育てる会議術

 ぼくがリクルートに再度入社したのは、リクルートが新卒中心の純粋培養の文化から、ネットに対応するために中途の即戦力を大量に採用し始めた頃でした。ぼく自身も、マネジャーとして人をどうやって動かすか、組織の力をどう引き出すかという問題に直面していた時期で、当時の経験は大きな財産になっています。

 ここでは、そのときの試行錯誤をベースに、他の職場での経験も加えて完成させた、ぼくなりの会議のノウハウをご紹介します。会議は、うまくやれば組織の実行力を高めることもできるし、人材育成の場としても機能する、このうえなく貴重な場なのです。

 当時は、求人事業以外のリクルートの全事業のインターネットマーケティングを担当させていただいていたので、全部で80人くらいのメンバーが参加してマーケティングノウハウを集約する会議を実施していました。

 非常に重要な場なので、どうすれば質を上げられるか、また効率よく運営できるのかをみんなで考えた結果、事務局のメンバーだけを集めて、「事前会議」と「振り返り会議」という2つのミーティングも併用するスタイルになりました。つまり、本番の会議をうまくやるために、前後に2つの会議をやって、3つ1セットで回していたわけです。

 たとえば、本番の会議後の「振り返り会議」で、「今日、こういう議題が出たけど、次はこんなことを仕掛けたほうがいいよね」「こうしたほうがよかったよね」といったことをまとめておきます。そして次の本番の前の「事前会議」で、「前回決めておいた仕込みはできた?」「ここまでは今回取り上げて、ここからは次回に持ち越そう」といったことを確認するのです。

 それぞれ10分もかからないミーティングでしたが、これをやるのとやらないのとでは、本番の進行具合が全然違ってきます。

 また、本番の会議の最後に、参加したメンバー全員に感想を述べてもらうチェックアウトの時間を設けていました(途中から、レポートでの振り返りと宣言をメールで共有しあう形に変わっていきました)。「今日の会議でいちばんよかったこと」と「それを次にどう生かすか」をその場で全員に宣言させるわけです。なおかつ、その宣言のあとに、「どうすればもっと会議はよくなると思いますか?」と聞いて、改善案を出してもらいます。

 この目的は、メンバーが会議を「自分事化」していくことにありました。いちばんよくないのは、事務局に任せきりで、受け身で会議に顔だけ出すようになってしまうことです。それではせっかくのミーティングが有効活用できません。

 会議やミーティングの目的は情報共有と意思決定といわれています。しかし、いちばん大事なのは、意思決定したことに対して、メンバーの「わたしがやります」というコミットメントを取ることです。

 みんなの前で「やります」と宣言してもらったら、それをみんなで「すごい!」とほめて拍手したり、場合によっては記念撮影をしたこともありました。こうすることで、お互いに逃げられないようにするのです。そのうえで、期限までにやっていなかったら逐次確認します。それによって、会議がただの顔合わせの場ではなく、組織の実行力を高める場として機能するようになるのです。

 会議の裏の目的として大事なのは、メンバーの育成です。会議の中で、みんなが見ている前でコミットメントすれば、本人はどんなことがあってもそれを実現しようと努力します。それが本人の成長を加速させるのです。

 また、ファシリテーションの上手な人のスキルを他のメンバーが盗めるという効果もあります。ただ見て終わりではなく、チェックアウトで気づきや学びを口に出させるのは、それを「自分事化」して意識させる効果も狙っています。

 もう1つ、事務局は4人のメンバーで回していましたが、そのうちの2人は元から事務局にいたメンバー、残りの2人は新たなメンバーという組み合わせにしていました。そして、新メンバーには「3ヵ月後に君たちが中心になるから」とあらかじめ伝えておきます。そして後継者となってからは、「先代よりもいい会議をつくれ」とつねにプレッシャーをかけていたので、どうしたらもっと会議をよくできるか、毎回強い当事者意識をもって参加し続けたのです。

 コンピュータとアルゴリズムに囲まれて育ったぼくは、何でも最適化しないと気が済まない性格です。だから、物事がどういうプロセスで進んでいて、そのプロセスをどう改善すればよくなるかに興味があります。会議についても、「何を話し合うか」という「What」の部分だけではなく、「どういうふうに会議をするか」という「How」の部分に着目して、改善を繰り返してきました。

 そして、個人的に大事な秘密を打ち明けると、当時の上司は、ぼくが同じことの繰り返しが苦手だと見抜いていて、継続することと任せることが得意な右腕をつけてくれました。アイデアを出したらすぐに飽きて興味を失いがちなぼくをおだて、お尻を叩いて、改善し続けることの楽しさを教えてくれたのは、右腕の彼女と他のメンバーの人たちでした。改善し続けること自体をみんなのアクティビティとして楽しむことができれば、決して同じことの繰り返しにはならないのです。

 みなさんも、時間のムダと思っていた会議をハックすると、思わぬ発見があるはずです。